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NARRATIVES
BY INTERMEDIATORS

多様性が許容される社会は、どんな「場」から立ち上がるのか ――3月13日に重ねてきた対話の記録

  • 執筆者の写真: インターミディエイター事務局
    インターミディエイター事務局
  • 22 時間前
  • 読了時間: 7分
青や緑のグラデーションで多様性のある社会をイメージする画像

多様性は、制度や理念だけで実現するものではない。

人が集い、離れ、また戻ってこられる「場」のあり方の中で形づくられていくものだ。

毎月13日に行っているインターミディエイター(有資格者)が集うダイアログでは、毎年3月13日に、変わらず「多様性が許容される社会を実現するには」をテーマに取り上げている。この日付は、テーマ提案者である和田善行さんにとって、個人的な喪失の記憶にちなんだ特別な日でもある。生きづらさや性の在り方をめぐるテーマを、出会った人と共に考えつづけるという、言葉少なに抱き続けてきた意志が、この場の芯をつくっている。

いぶき福祉会、協働責任者、インターミディエイターでる和田善行さん

「性の多様性に限らず、皆さんが日々感じている“多様性”について、今日は一緒に話せたらと思っています」

共通の問いを一つに絞らず、各自が最近触れた違和感や発見を持ち寄るかたちで、ダイアログは始まった。


「場の履歴」と「参加のしやすさ」

最初に言葉を紡いだのは、黒木萌さんだ。選挙後に友人たちと政治を語る会を開いてみると、意見が思った以上に似通っていた。「違う立場の人と話す場」をあえて設ける難しさに直面したという。別の日、子どもと訪れたプレイパークでは、たまたま送別会のタイミングに出くわし、温かな空気の一方で、輪に入りづらい感覚も抱いた。さらに、地域の精神保健福祉士が開き始めた対話の場では、「いろんな人が話したい気持ちを持っている」ことが素直に伝わってきた。

ここから見えてきたのは、多様性は属性だけでなく、場の履歴や参加のしやすさと深く結びついているということだ。よい場であるほど、継続の中で暗黙の前提やリズムが生まれ、新しく来た人には見えないハードルにもなりえる。


同じ場所に「複数の入口」を——TAKASHIMA BASEの試み

滋賀県高島市で「TAKASHIMA BASE」という地域拠点を運営するのは、ぼくみんの瀬川航輝さんだ。

ぼくみん、TAKASHIMA BASEで活躍するインターミディエイター瀬川航輝さん

カフェ兼コミュニティスペースを用意することで、地域の若い世代が集まり活気が生まれはじめている。その一方で、「自分は対象ではない気がする」と感じる人の声も届いた。そこで、時間帯を分ける/テーマや集まる理由を複数用意する/ひとつの大きな輪に無理に入らなくてよい構造などを設計。出産をテーマにした企画や、アルコール提供を始めたことから仕事帰りに立ち寄れる飲み会の場づくりなど、入口を増やす工夫を進めている。

2025年10月にオープンしたTAKASHIMA BASE内にあるBASE BOOKS。オープニングの様子
2025年10月にTAKASHIMA BASE内にオープンしたBASE BOOKS(滋賀県高島市)(instagram)

結果として、想定していなかった人が関わり、当初のイメージとは違う景色が立ち上がってきたという。現在進行形で進んでいるこのプロセスは、インターミディエイターが媒介することで実現を目指す「開かれた対話と創造の場」の具体像をよく示していた。


目的志向からこぼれ落ちるもの——「自分全部」でいられる場とは

この流れを受けて話題を広げたのが、長野県へ移住し地域づくりに取り組む北埜航太さんだ。

長野県で地域づくりのなかでインターミディエイターとして活躍する北埜航太さん

近年、学びや実践の場は目的志向の会が増えているが、そうした場では「この目的に合う自分」だけを切り出して参加することになりがちだとのこと。けれども、本当の意味での多様性とは、成果や役割を前提にせず、「自分全部」で参加できる場にこそ宿るのではないか——そんな問題提起がなされた。

著述家、インターミディエイターである黒木萌さん

これに対して黒木萌さんは、一歩踏み込んだ視点を重ねた。「自分全部」で参加できることと、「自分をすべて開示しなければならない」ことは同義ではない。むしろ、すべてをさらけ出さなくても、そのままでいられること、語らない選択も含めて尊重されることが、場の心地よさにつながるのではないか、というのだ。

このやりとりを受けて、徳島でスモールビジネスサポーターとして活動する中川桐子さんが、「まさにこのインターミディエイター・コミュニティは、そういう場として設計されているよね」と言葉を継いだ。

徳島を起点にスモールビジネス・サポーターとして活躍するインターミディエイター、中川桐子さん

常時つながるわけではないが、必要なときに戻ってこられる。近すぎず遠すぎず、参加の仕方を自分で選べる。その距離の設計そのものが、多様性を支えているのではないか、という整理だった。

 

「ほどよい距離」を設計する

上の話題とも呼応するように、参加者の間で共有された感覚がある。常時接続ではなく、月に一度顔を合わせ、必要なときに言葉を交わし、また各自の生活に戻っていく。有資格インターミディエイターたちが参加する年間プログラムはそのように設計されている。この近すぎず遠すぎない距離が、安心と尊重を同時に支えるのではないか。関係がつながり続けるためにも、つながり方を選べる自由が、よりよい質を担保することが見えてきた。

 

「人間と機械と自然の協働」が支え合うという多様性

作曲家・編集者の上杉公志さんは、インターミディエイターが共有する「人間と機械と自然の協働」という考え方について、これまで自分は主に人間同士の協働に目を向けてきたと振り返った。

作曲家、編集者であり、インターミディエイターである上杉公志さん

しかし、体調を大きく崩して寝込んだこの一週間、AIに体温や食事などの簡単な記録をつける中で、機械であるAIとの関わりに思いがけず支えられ、おもしろい経験をしたという。記録に応じて返ってきた「熱は下がりましたか?」「それは回復過程でよくある状態ですよ」といった反応に、明け方の心細さが和らいだ。また、食欲が戻りかけたときに「今は無理をしない方がよさそうです」と助言され、立ち止まれた場面もあった。

「体が思うように動かなくなると、人の意思より、自然の働きが前に出てくる。そこに機械が関わることで、孤立せずにいられた」

上杉さんが示したのは、機械との協働もまた、多様な関わり方の一つではないかという視点だった。多様性とは人と人の違いだけでなく、支え合いの回路をどこまで開いておけるかという問いでもある、そんな教訓が立ち上がってきた。

 

ラベルなき理解へ

ダイアログの途上で、「マイノリティ」という言葉が多く聞かれた。しかし同時に、「マイノリティ」という言葉そのものへの違和感も共有された。

マジョリティ・マイノリティという「二分法」に由来するこの語を使わずに状態を記述できないものだろうか。それができたとき、私たちは初めて、多様性・複雑性が許容された環境に立てるのではないか。

ラベルを貼ることで可視化や制度化が進む一方、名づけが境界を強化する側面もある。だからこそ、可能な限りラベルを手放し、具体の状況、場の設計、参加の自由度などで語ることを試みたい。

 

誰もが、ある場面では「通じない側」になる

和田さんが紹介した過去の体験が象徴的だった。聴覚に障害のある方々のグループと一緒にボウリングへ行ったとき、自分ひとりだけが音声言語でコミュニケーションを取る側に置かれた。周りは身振り手振りで楽しそうに交流しているのに、自分の言葉は理解されず、意味をなさない。それは驚きの「逆体験」だった。このエピソードは、特定の領域だけが「少数派」の問題を抱えるのではなく、誰もが状況によって“通じない側”に立ち得ることを思い出させる。

 

おわりに

この日のダイアログは、「場の履歴」「入口の多様化」「目的と余白の両立」「『自分全部』と開示の自由」「ほどよい距離」「ラベルなき理解」、そして「人間・機械・自然の協働」というキーワードを手元に残した。多様性は、理念や制度だけで成り立つものではない。人が集い、離れ、また戻ってこられる設計があり、機械も含めた対話の回路が開かれているとき、社会の中で実感を伴って現れてくる。

来年の3月13日も、同じ問いにあらためて向き合ってみたい。設樂剛先生から、「多様性とは差異の集合である」と学んだ。差異の集合を活かし、安心して過ごせる場を、急がず、無理なく、少しずつ増やしていくために。このレポートが、読んでくださった一人ひとりにとって、身近な場所で多様性を考え、育くんでいくきっかけになれば幸いである。


◆アーカイブ:

2026年3月13日 「多様性が許容される社会は、どんな「場」から立ち上がるのか」(現在の記事)



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文:松原朋子

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