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NARRATIVES
BY INTERMEDIATORS

  • 執筆者の写真インターミディエイター事務局

自身を支え動かす“概念”「ソーシャル・キャピタル」との出会い ── 和田善行さんインタビュー

更新日:3月27日


ソーシャル・キャピタルという概念を大切にする和田善行さん(いぶき福祉会、インターミディエイター)


ビジネスを含め、およそ人間の共同社会は「関係の網の目」の中で成立しています。とりわけ、人間・機械・自然の協働は、人類共通の重要課題です。

だからこそ、その「あいだ」に立って、破壊され、毀損され、失われたリンクの数かずを修復、再生、再創造するモノやヒトが必要です。「あいだの知」を担う媒介役を 「インターミディエイター( intermediator )」といいます。誰かの上か前に立とうとする “ 強いリーダー ” ばかりを探し求める人にとっては、じつに見えにくいタイプの存在です。


本連載では、この「インターミディエイター」の考え方に通じるプロジェクトや展望をお持ちの方々をお招きし、お話をうかがっていきます。


第1回目は、「インターミディエイター」(有資格者)として活躍する、社会福祉法人いぶき福祉会の和田善行さんです。



 

[プロフィール]

和田 善行さん

社会福祉法人いぶき福祉会 協働責任者/事務長、インターミディエイター

大学時代には、筑波大学で数学を専攻すると同時に、ボランティア・サークルを新設。障害のある方々の生活課題にまなざしを向けて、プロアクティブに活動していました。卒業後も活動を継続しながら、神奈川県丹沢主脈の山頂にある山小屋の小屋番を経験。その後、高齢福祉の分野を経て、再び障害福祉に立ち戻るため、岐阜に移住し、社会福祉法人いぶき福祉会に所属。現在、協働責任者として、団体内外との協働を促進し、クリエイティブ・ワークチームの形成を目指しています。そして、息子の自死をきっかけにして、自らの人間回復と再生につとめながら、“競争のない、多様性が許容される社会”の実現を構想しています。

 


── まず、多くの方にとって、「インターミディエイター」という言葉は、まだ聞きなれないものかもしれません。和田さんの言葉でいうと、「インターミディエイター」ってどんなことでしょうか?


和田: そうですね、まず思いつくのは“橋渡しをする”ことですね。こちらの人とあちらの人の“あいだ”に立って橋渡しをする。そこにはやっぱり、誰が上とか、誰が下とかではなく、横並びで橋渡しをする。そういうイメージを持っています。


── 実際、岐阜のいぶき福祉会で事務長、そして、協働責任者という立場でいらっしゃいますが、今なさっているお仕事は? その中で、今のインターミディエイターのイメージが活かされているところがありますか?


和田: 立場的には事務長で、事務のメンバーが全部で5,6人います。皆さん、本当に優秀な方たちですので、それぞれでお仕事をしていただいている中で、自分はある意味、”あいだ”をつなぐというかですね。

例えば、毎週金曜日に財務部会という名前で、メンバーが集まっていろいろ情報共有したり、対話をする場を設けています。事業所が北部と西部とに分かれているものですから、普段はなかなか顔が合わせられないなかでも、こういう場をつくり、参加し、対話できる時間をつくっています。あるいは、僕自身が”あいだ”に入って、みんなで色々な仕事を分担したりしているのかな。


── よろしければ、いぶき福祉会さんの全体像について、聞かせていただけますか?


和田: いぶき福祉会は、障害のある方が通所する事業所やグループホームを運営しています。ただ、これらに留まらず、創業当初から「地域とどうつながっていくか」を重視している団体です。そして、障害のある方も、支援する側とされる側という「2分法的な分け方」ではなくて、障害のある方も共に地域をどうつくっていくかを考えて活動しています。彼らの仕事づくりをどうやっていくかを意識しながら、日々を過ごしていますね。知的障害の方々がメインなのですが、ひとことで障害といっても多様です。


── 利用者さんの呼び方に、いぶきさんの姿勢が表れていると思いますが?


和田: そうなんです、いぶきでは、障害のある利用者さんのことを“仲間”とよんでいます。支援する側・される側という関係を超えて、“仲間なのだ”という考え方です。事業所に160人ぐらい通う方がいて、そのうちグループホームで生活されている方が50人ほどいらっしゃいます。


── 重度の障害を持たれている方が、仕事ができる環境をつくっていることが、とてもユニークだと聞きました。


和田: 重度重複障害者の方々は、病院で生活していることがほとんどだと思います。在宅で生活ができていたとしても、通所で事業所に参加する方でも、ゴローンとして生活することが多いんですけども。いぶきでは、そのゴローンとしている時間もありますが、仕事の時間をつくっています。1日に30分という時間ですが、和紙をつくる紙すきの作業を行っています。一人一人のできることにあわせて、仕事を細分化してつくっているんですよ。例えば、弱い力でも引っ張ると、それがテコの原理で水が流れたり、水を切ったり。実は一人がお休みになるとプロセスが止まってしまうので、みなさん休まずに参加されていますよ。


── 岐阜ならではの美濃和紙をつかったポケノートは、好評だそうですね。


和田: ええ。あとは、お寺さんめぐりで使う御朱印帳にしたり、ブックカバーになっています。


── 先ほど、地域と一緒に、というお話しもありましたが、和田さんご自身でも外の方と関係をつくることはありますか。その中で、インターミディエイター的な動きをすることもありますか?


和田: 今ちょうど自分の関心事として、LGBTQの方とお会いする場面があります。皆さん当事者なのですが、僕はまた違う立場としてかかわっているんですね。その中で、色々、これから活動を、できるところから何か始めてみようかなという段階です。


── 和田さんはところで、「インターミディエイター」の考え方に、どんな流れで出会われたのですか?


和田: うちの北川が、最初に講座を受けまして、それをいぶき福祉会の中に持ち帰ってきまして、この考え方に初めて出会いました。その後、設樂先生に岐阜へお越しいただいて、レクチャーやワークショップで、新しい考え方を聞くようになりました。


── 最初に話を聞いた印象を覚えていらっしゃいますか?


和田: そうですね、みんな最初はなんかちょっと驚いていたっていうか、聞いたことのない話も多かったので。でも、僕自身はあまり違和感を持たなくて、ああ、なんか、やっぱりそうなんだなっていう風に感じて、結構すんなりと入ってきたことを覚えています。僕自身、素直な性格なものですから(笑)。あ、そうなんだなというふうに、素直に受け取ることができました。


── 最初に、「事務長ではあっても上下ではない関係でやっていくことを心がけている」とおっしゃっていましたが、もともと和田さんもそう考えていたのですか?


和田: 僕自身が上に立つというよりは、ただひたすら頑張って仕事していたら、なんでもかんでもやるようになって、そのまま事務長になっちゃったっていうことなんですよね(笑)。ただ、振り返れば、多分、リーダー的に動いてしまったことも多々あったんじゃないかなという気がします。

インターミディエイターの概念を知った今では、チームのみんなと一緒につくっていきたいなと思っています。事務の仕事というのは気が付くと第1カーブ的な、一方向な指示・命令になりがちです。それを、第3カーブ的に、対話的に進めていくことを心がけています。それによって、結構、違う成果が出ることを感じる部分も多々あるんですよね。


── インターミディエイターの5つのマインドセットの中に、今おっしゃった「対話能力」がありますが、いぶきさんは対話を文化にしようとされている印象がありますよね。対話的に進める成果を感じたエピソードは?


和田: 例えば、事務の仕事の中でいえば、年末調整という、ともすればただ事務的にお願いして提出してもらうだけで終わる仕事があります。それを皆さんにやっていただく中で、年末調整の書類づくりを媒介にして、色々な話を聞いたり対話的にやってみたことがありました。皆さん書類づくりがわりと苦手なんですが、わかっている人が教えるのではなくて、目線を合わせて一緒になって書類をつくるようにしたら、できるようになっていったということがありました。


── やはり、指示・命令や、上から教え込むことをやらないようにするだけでも、ずいぶん違うのですね。


和田: そうなんです。対話的なプロセスのなかで、事業室の仕事ってこんな風にやっているんだなと、他部門の方から理解が得られたり、そんな風に感じてるんだなとわかりあえたり。上から教えようと思ったらそうもできることなんですが、そうすると、“やらせる側・やらされる側”という「2分法」な関係になってしまいます。そうではない形で伝え合うと、案外できた上に、さらにコミュニケーションが広がっていったりして、それが面白いなと感じましたね。しかも、締め切りまでに出来上がる結果になりました。


── 「対話」のひとつの特徴として、“予測しなかったものが生まれる効果がある”と、「インターミディエイター講座」で習いますよね。この講座以外にも、和田さんは「生命論マーケティング」や「ナラティブウェア」など世界構想プログラムの関連講座にも参加して、大事な考え方を聞かれていますが、中でも、和田さんがこれは好きだなと思う言葉やフレーズや概念がありますか?


和田: まずひとつは、「ソーシャル・キャピタル」ですね。この概念を初めて聞いたとき、涙がもう止まらなくなりましてね(笑)、自分が今までやってきたことはこれだったんだ!!という衝撃がありました。「ソーシャル・キャピタル」、つまり、相互信頼だったり、お互い様の関係であったり、ネットワークをつくっていくってことをやってきたんだな、と思った時に、すごく、スーッと入った感じがしたんですよね。

それから、やっぱり「物語」ですね。「人は物語なしには生きられない」ということ。人は誰しも物語を持っていて、その物語っていうのは未来を描く物語であるということ。どういう未来を描くのかといった時に、やっぱり、第3カーブの未来をどう物語にしていくかが、すごくこれから求められていると感じていますし、そういう人でありたいなと感じています。


── 「第3カーブ」という考えをご存知ない方へ、少しイメージを解説していただけますか?


和田: そうですよね。まず「第1カーブ」というのは、上下の“縦の関係”がベースになります。上から下に伝達をするとか、まあ上司と部下みたいな形ですね。第1カーブでは、コミュニケーションは一方向で、指示・命令型です。第1カーブと第3カーブのあいだにあるのが「第2カーブ」で、これは、上下ではなく、お互いに意思疎通が繋がってきた“横の関係”です。だけれども、まだ横の関係でしかないというもの。で、「第3カーブ」になると、今度はそれが“網の目の関係”になっていきます。ただ上下でもなく、横だけの関係でもない。関係が網の目のようになって、つながりがつくれる関係になる。それが第3カーブですね。


── そういう“関係の網の目”の中だと、人と人の”あいだ”を結んでいくような「インターミディエイター」という存在が大事になるなという実感がありますね。


和田: 同じことをやっていても、第1カーブ型でやると、やっぱりやらされるっていうことになってしまって、それだと人は成長していくことができませんし学ばなくなりますね。やはりお互いに学び合うためには、“関係の網の目”をつくっていくことを意識しながら行動していく。そうすることで、世の中自体が、ただつながっているだけじゃなくて、“結び合っている”っていう感覚になるんじゃないかなって思います。


── 「インターミディエイター・プログラム」に参加して以来、5年ぐらい学ばれていると思いますが、ご自身の変化を感じるところは?


和田: 最初の頃は、例えば事務室だとしたら、どうしてこういう風にやってくれないんだろうというような部分が目についていたんですが、この第3カーブをやることによって、視点が変わってきたんですね。「あ、この人は、こんなこともできるんだ」とか、「ああいういいところもあるんだ」っていう風に、人の見方が変わってきたなと思います。そうすると、どうしてやってくれないんだ、ではなく、案外できちゃうじゃん!みたいな感じがあるんですよね。やっぱり、学び続けることで、見方が変わってくるのが一番大きいと思います。その相手の立場に立ってものが見えるようになってくるというか、ただ単に“共感する”だけじゃなくて、相手の視点に立って「視点交換する」ということを学ぶんです。その相手の立場に立って考えられるようになり、そうすることから、一人一人が多様性として許容されていくことが始まるのだと思います。


── 今、「多様性」という言葉が出ましたが、和田さんのご関心事のひとつだと思います。インターミディエイターとして、和田さんがこの後、挑戦していきたい、こういうことをやっていきたいなということは?


和田: いぶき福祉会のことでいえば、もう少し「対話と協働」の関係を、社内につくっていきたいんですね。今年は創立30周年で、今までも頑張って来てはいるんですけども、これからもいぶきがいぶきであるために、まず職員間で、対話を重ねていきたいなと思います。ライフワークでも、特にLGBTQの話をしましたが、その方達が居心地のいい社会になっていくために、皆さんの理解と認知を広げていきたいと思っています。

おそらく、この2つはどこかで重なりがあると考えていまして。いぶきの物語と、ライフワークの物語とが、まず並行で走っていて、それがどこかのタイミングで、螺旋のように絡み合っていくというか。そうなっていくと、また相互に深まりが出てくるなあ、面白くなってくるなっていう風に思います。


── 今年も「インターミディエイター講座」がありますが、参加を検討されている方々へ、一言メッセージを頂けますか?


和田: 新しいことをやっていくには、やっぱり新しい考え方だったり、新しい言葉だったりが必要なんじゃないかなと思います。このインターミディエイターの講座は、そういうものに触れられる、すごくいいチャンスですので、ぜひ皆さん、参加していただけたらと思います。僕は、先ほど、自分自身を素直なのだと言いましたけれども、ぜひ素直に受け取ってほしいです。はじくことは簡単にはできるんですけども、はじくんじゃなくて、1回、自分の中にストンと入れてみて、で、自分の中で、ある意味、咀嚼してみて、その中で多分、また違う言葉が生まれてきたりとか、違う考え方が出てきたりとかすると思います。それがまた、インターミディエイターの考え方と繋がったりしてくると思うので、きっと楽しくなるんじゃないかなっていうふうに、思います。


── 和田さんは、これから、この社会をどんな場にしていきたいですか。


和田: そうですね、先ほども「多様性」という言葉を使いましたが、やはり「多様性が許容される社会」っていうのが、自分のこれからのテーマかなと思います。これからも頑張っていきますので、皆さんと連携していきたいですね。


(2024/3/10, ダイアログと文:松原朋子)



 

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