限界集落から始まったスマート・オフィスの未来

最終更新: 2018年11月30日

星野晃一郎 株式会社ダンクソフト代表取締役

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20世紀に夢みた未来

 今でいうスマートオフィスの試みは、まだクラウドのなかった1980年代から始めていました。会社のある東京・日本橋でビル一棟を買い取り、賃貸サービスや通信インフラから管理まで良好な企業環境をまるごと提供できるプロジェクトを進めていたのです。その後、2003年には沖縄・石垣島、2008年には伊豆高原と、何度か地域でのスマートオフィス計画が立ち上がりましたが、いずれもうまくいきませんでした。原因は、地元との交流不足からくる不信感や反発、通信環境の悪さ、紙の書類が多いことからくる共有不足、顔の見えない関係の難しさなど、さまざまです。この頃の失敗や経験は、その後、スマートオフィスを展開する際に生きることになります。



311、東日本大震災で徳島へ

 2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。さまざまなリスクが現実のものとなって立ち現れるなか、徳島の話が聞こえてきました。通信環境がよく、電力事情も心配ない。徳島出身のIT経営者I氏の紹介で何度か視察に行きました。そのうち、別件で知り合った徳島出身のインターミディエイター中川桐子さんが、側面支援で県庁関係者や地元で活躍しているさまざまな人を紹介してくれ、縁が広がり、つながっていきました。神山町の地域活性化に取り組むNPO法人グリーンバレーの大南信也さんも、その頃に知り合った一人です。


 2011年9月、最初の実証実験の際にはダンクソフトからも7〜8人の大所帯でチャレンジに臨みました。限界集落の再生に関心のあったNHKが同行取材に来るなど、注目度も上がっていました。実証実験の締めくくりとして市内のホテルで行った報告会には、地元IT企業、関連自治体関係者、メディア関係等約80名が参加。神山町と伊座利をKINECTで結んで遠隔コミュニケーションのデモを行いました。ただ、地元のIT企業は既存のマーケットを奪う脅威と勘違いして猛反発し、我々を「黒船」と呼んで対決姿勢をとるなど、風当たりの強い部分もありました。




地域×ICT=地方創生のモデルに

 2011年12月、「ニュースウオッチ9」(NHK総合テレビ)で、神山サテライト・オフィスの取り組みが紹介されました。神山温泉の綺麗な川の中でダンクソフト社員がパソコンをしている映像は大きなインパクトがあり、震災で閉塞感が漂う日本に開放感を与えもしたようです。「全県CATV網」により光ブロードバンド王国をうたっていた徳島県の通信環境メリットを発揮した限界集落・神山町の挑戦は、その後、ICTとセットで地方創生のモデルになっていきます。


 徳島サテライト・オフィスの成功要因はいろいろありますが、地元の神山町役場ではなく、大南さんらNPO法人グリーンバレーが主役となっていろいろな活動を行い、県庁がそれをバックアップしたことは大きかったです。「IT、クリエイティブは地域の子供たちが将来地元で働くヒントになる」と、参加企業が次々と新しい動きを増幅させ、ものすごい速度で町が変化していきました。また、中川桐子さんという地元のインターミディエイターとの出会いも好循環を生んだ転機のひとつ。そうした多様な関係者全員(NPO、県庁、各自治体、参加企業など)がSNS上で情報を共有することで、直接会わずとも活動を連携させて進めることができました。



夢が可能になる「環境」を提供していく

 やろうとする人のためにやりやすい環境を整える。それが経営者としての自分の役割だと考えています。そこはリーダー不要論の考え方で、自分が先導して何かできると思っていません。やろうとする人がいて、やれる環境があって、そこに必要な予算がつけば、あとは勝手にやってくれる。おもしろいことが起きていく。


 人は自然に「育つ」もので、育てる「環境」を提供するほうが重要だと思います。ダンクソフトのこれまでの社内改革もそうですし、神山のサテライト・オフィス・プロジェクトも社員に任せていました。神山に続いてできた徳島市内のサテライトオフィスは、徳島市内で働きたいという社員の直談判で、机ひとつからスタートしました。


 いま、徳島県全体で60社を超えるサテライト・オフィス企業が進出しています。ダンクソフトは6年間で6名を雇用し、6人の子どもが生まれています。


 私は、地元に残れる可能性を広げることが、日本全体の活性化・分散化につながると信じています。私の役割は、それが可能になる場づくりをすること。多様な人々の集まるオンライン、オフラインでの場づくりを今後も進めていきます。



活動分野: ICTによる限界集落の活性化

発揮したインターミディエイターのマインドセット:

☑3分法思考/多元的思考

☑エンパシー能力

☑多様性・複雑性の許容

☑エンゲイジメント能力

☑エンパワリング能力

☑対話能力

☑物語り能力

Certified Intermediator


星野 晃一郎

株式会社ダンクソフト

代表取締役

1956年日本橋生まれ。1982年より独学でプログラミングを学ぶ。1986年9月株式会社デュアルシステム(現ダンクソフト)代表取締役 就任、1986年10月に(社)東京ニュービジネス協議会へ入会し、長年理事を務める。1987年 特種情報処理技術者取得 OS,通信ネットワーク、セキュリティー、DB、AIなどオールマイティーなエンジニア。2011年7月(社)エコ・ペーパーレス協議会設立、代表理事。経済産業省、厚生労働省、総務省等より受賞多数。

その他、総務省 地域情報化アドバイザー、日本パエリア協会 理事、中央エフエム 社外取締役・パーソナリティーなどをつとめる。


http://www.dunksoft.com

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13605

   労働時間が短ければいいの?

https://fledge.jp/article/dunksoft-1

   新しい働き方をインテグレートする、サテライト・オフィスの在り方

http://kobemd.com/movie/movie0011/

   神戸モトマチ大学 エコペーパーレスの実現



Editor

福田 容子

「インターミディエイター」は設樂剛事務所の登録商標です

©  SHIDARA & ARCHIPELAGOs  2015

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