宜野座村 村づくり村民会議 ~「厄介者」と作りあげた提言~

最終更新: 2月24日

平田直大 一般社団法人しまのわ代表


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6000人の村に生まれた村民会議

 始まりは2014年の冬だった。元ルーツメンバーのYさんから、「宜野座村でおもしろい取り組みが始まっている」と紹介されたのは、宜野座村長肝いりで始まった「村づくり村民会議」だった。月1回、自主的な参加者が村役場に集まり、「自分だったら村をこうしたい」というアイディアを話し合いながら、最終的に提言にまでまとめ上げて村に提出するという事業だ。背景を村長にヒアリングしたところ、「地域づくりには住人の声が大事。だが宜野座の人は酒が入らないとなかなか口を開かない」という課題意識から始めたとのことだった。


 初年度である2014年は村役場職員がファシリテーターを務めた。初年度ということでやる気のある志高い参加者が集まったものの、自分たちがファシリテーションの素人ということもありなかなか上手くいかない。そこで、外部でそのようなことに長けた人がいないかと探していたらしい。私たちも村長の想いに賛同し、また6000人しかいない村民から20名も参加者が出る宜野座村の「熱さ」に感嘆し、ぜひ関わりたいと考え、2015年度から運営をお手伝いすることになった。




 この年は2年目ということで参加者がなかなか集まらず苦労した。だが担当職員の熱心な個別の呼びかけで、若者を中心に15名程度が参加。3グループに分かれての提言となった。課題も多く残ったが、そのぶん次年度にやりたいことも見えてきた一年だった。


新しい取り組みと、瞬間的に訪れた試練


 2016年度は前年度の振り返りから、さまざまな取り組みを行った。その一つが、もっと気軽に村民が参加することを促すため、月1回の村民会議の実施場所を、村役場から村内6区の各公民館に変更し、6施設の持ち回りで実施することだった。これはとても良い効果を生み出し、「ちょっと見学だけでも」という形で入る人が増えた。

 また、月1回のプログラムを前年度から見直し、協働推進で全国的に進んだ取り組みをしている方を講師として招き、参加者の内面にある「やりたいこと」をどう整理し、周りに伝えるのか?というプロセスを入れていった。





 事件が起きたのは第3回目、K区で実施した村民会議だった。その区に住むTさんはその日が2回目の参加だったが、初回から目つきが鋭く態度もぶっきらぼうで、少し嫌な予感がしていた。その回はとくに何事もなく終了したのだが、第3回目の講師レクチャー後にそれは起きた。


「こんなことして、何の意味がある!」

怒気をはらんだ大声が公民館中にこだました。発言の主はTさんだった。


「いくらこんなことしたって、村は変わらん」というTさんの発言に対し、村役場や村民たちは「ああ、ついに始まった」というような顔をしていた。瞬間的に、私はTさんが村の中で少々厄介がられているのだと直感した。すぐにTさんのそばに寄り、言葉を交わした。細かなやり取りまでは覚えていないが、気を付けていたことだけは覚えている。それは「この人を“厄介”と思ってはいけない」ということだった。



先入観を外し、対峙し、対話する


 プログラムを進めつつ、私はTさんの話を聞いていた。よく見ると、Tさんは講師の話をびっしりと自分のノートにメモしていた。きっと他のどの参加者よりも。Tさんはおそらく人一倍、村のことや区のことを考えている人に違いない。難しい局面だという緊張や焦りもあったが、今はこの人が大事だ。そうと思えたから、Tさんの話に耳を傾けることができたのだと思う。


 やがてTさんは私に自分の想いを語り始めた。自分はK区を一度出て、設計などの仕事をしながらマリンスポーツもやってきた。区に戻って自分たちの海でもそういうことをやりたいと思っていたが、漁協や村との絡みでやりたいことがあまりできない。自分はボランティアでビーチ・クリーン活動も徹底的にやっているのに、村や漁協はその功績も認めてくれない。新しい観光施設が出来るらしいが、自分たちのきれいな海が汚されていくのではないかと不安だ…などなど。


 私はTさんの想いをまずは受け止めた。確かにTさんには独善的な部分があったかもしれない。村や漁協に対してもけんか腰になりがちだった。でも、それも想いの強さゆえだ。

Tさんの想いを全部聞いた後、私は「あなたの想いは素晴らしい。だけど伝わらなかったら、何も始まらないんじゃないですか?」と話しかけた。「村民会議という場がせっかくあり、想いは素晴らしいのだから、きっと賛同する人もいるはず。私と一緒にぜひこの場をうまく活用しましょう」と。



村への提言


 最終的にTさんは、自分の想いを村に提言したいと言ってくれた。この年の提言は、提言のオーナーが自分の賛同者を3名集めることで初めて提言として成立する、という形をとっていた。毎月来ていたMさんが使命感からTさんチームに参加した。あと2名だ。Tさんは、「自分の地区に仲間があと3人いるから、彼らを呼べば大丈夫」と言っている。しかしその3名は、村民会議に全く顔を出さない。私はTさんに「村民会議でなくていいので、とにかくその人たちを集めてほしい」と言い続けていた。


 提言まであと2か月を切った冬だった。Tさんから「今日の夕方6時からなら3人集まれる」という連絡があった。もう昼を過ぎていた。当時、事務所があった浦添から宜野座までは約50キロ。だが行くしかない。高速を走らせ、K区公民館裏のベンチに着くと、確かにそこには「3人の仲間」がTさんと共にいた。どれだけ嬉しかったか。私はその3人に村民会議について改めて説明し、「皆さんの参加が必要なのだ」と訴えた



 2017年2月の発表当日、その中の2名が来てくれた。これで、Tさん以外に3名が集まった。村はTさんの提言を聞き入れなければならない(少なくとも、検討をしなければいけない)状態になった。Tさんの発表は、あれだけ事前練習したのにあらぬ方向に行くし、想定していないことばかり話すが、Mさんが県外出張の帰りの飛行機で最終手直しまでしてくれたプレゼン資料のおかげもあり、要旨はしっかりと伝わった。提言発表会に来た村3役や村議会議員の皆さん、村役場課長全員に、Tさんが伝えたいことがきちんと伝わったのだ。現在、Tさんが提言した「ビーチ・クリーン」は村の観光商工課がしっかりと引き継ぎ、取り組みが進められている。



活動分野:地域での協働促進 

発揮したインターミディエイターのマインドセット:

□3分法思考/多元的思考

☑エンパシー能力

☑多様性・複雑性の許容

□エンゲイジメント能力

☑エンパワリング能力

☑対話能力

□物語り能力


Certified Intermediator


平田 直大

一般社団法人しまのわ 代表


1984年神奈川県生まれ。大学卒業後都内の情報会社勤務を経て、大学時代の研究テーマであった「中山間地域の維持可能性」に関わりたいと2014年に沖縄に移住。地域活性・プロジェクトデザインを行う会社の役員を3年間務めた後、2017年に沖縄で独立、現在に至る。県と市町村、市町村と地域住民といった、県内の各主体者の「あいだを繋ぐ」事業領域で奮闘中。

https://okinawa-iju.jp/

https://promo-uruma.com/page-419/




Editor

福田 容子

「インターミディエイター」は設樂剛事務所の登録商標です

©  SHIDARA & ARCHIPELAGOs  2015

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