「結び目」に私の仕事がある

最終更新: 2019年1月16日

中川桐子 セレクトライン代表


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47歳にして東京へ行く


 さかのぼること10年前。私は、いきなり東京に行くしかない、と決意する。「田舎と都会を農業で繋ぐ」をテーマにした、あるNPO運営者の話を聞いたとき、自分の道は「あいだ」にあると、直感した。理由は説明できなかった。当時周囲の人は「?」「何かあった?」などいろいろ思っていたらしい。今となれば、「結び目」のイメージが心に響いたのだ。


 東京で就いたそのNPOでの仕事は、しかし、「井の中の蛙」を思い知るに十分なことだった。1年で自分を見失いそうになり、そこを辞めた。何が原因でそうなったのかを考えたところ、徳島で育ち、徳島で仕事をしただけの私の性格や考え方が、大きい原因であったことに気がついた。私は、そのNPOに関わることで、共感する誰かの真剣な思いを広く共有できるし、応援することで実現できる。加えて自分にとって未知のことが学べる機会だと捉えていた。しかし、数世代下の人たちが集うその団体にとっては、依存だと感じられた部分もあったのだろう。それに、自身の勉強不足だったとも反省している。

  

 もう一つには、「田舎」と「都会」の構造の違いがあった。圧倒的に分母の人数が小さい田舎では、場所と業界に小さなグループがあり、活動する人が重複している複雑な構造になっていて、答えをはっきりさせるのは難しい部分があるのだ。だから、私のコミュニケーションはあいまいだと感じられたのだろう。都会では、一度あった人に二度会える確率は低く、次のステージに進むためには、その場で Yes or No をはっきりする必要があるのだと、人に聞いた。



東日本大震災が結んでくれた人の縁


 挫折した時点で、東京に行くと決めた思いを貫くかどうか、考え、決めかねていた。偶然、青年会議所時代の友人で、LED製品開発会社のO社長とランチをしていたところ、手にした徳島新聞に載っていた「徳島県LED新規事業対象の緊急雇用対策事業募集」の記事が目についた。Oさんが言った。「ちょうど植物工場用LEDの開発を始めたから応募しよう。採用されたら、それで東京に戻ればいい」。そして応募の結果、見事に対象事業になり、再び東京での活動がはじまることになる。LED植物工場用照明や水耕栽培設備の提案営業を、東京の自分の部屋を拠点に行えることになった。事業計画も未来の物語りだなと思う。


 東京での事業活動を始めて、1年目のNPOで得た様々な情報や、苦言、意見にどれほど意味があったか、よく理解できた。この経験がなければ新しい考え方は入ってこなかった。徳島からイベントに来る人たちのサポートをしたりすると、東京の人たちとのあいだで起こる「言葉が通じない」「返事をしない」を実感し、私はそのあいだを“通訳”する。いつしか、都会と徳島のあいだを結ぶ“通訳“として、人々を応援するようになっていた。地元阿南出身の、あるIT企業の社長からのご縁で、シェアオフィスもでき、人脈も広がり始めた。そのころ、東日本大震災が起きた。あの時を境に、東京の雰囲気は一変したと思う。


 その中で出会ったのが、ダンクソフトの星野社長だった。星野さんがパーソナリティをつとめる中央区の地域FMに出演し、LED水耕栽培箱での安心な野菜栽培について話す機会を頂いた。その後、ダンクソフトのフリースペースにLED照明の水耕栽培棚をサンプル設置し、ダンクソフトの方たちに触れることになる。クリエイティブな働き方を促進するエコペーパーレスの考え方やOffice365というツールも、その時に初めて知った。そこから、LED植物栽培用照明は、学術機関や、大学、有名企業に提案する道が広がっていく。ダンクソフトの所在地であった日本橋はさすが、起点の場所なのだ。ダンクソフトのフリースペースと地域FM放送が「空き地」効果となり、多種多様な人たちが会える機会を創出していた。その場の効果により、私は、自然にエンゲイジメントされ、エンパワリングすることを体験できた。井の中の蛙は、自己再生を体現し、自由になった。



人と人との結び目


 震災後の5月、「サテライト・オフィス」という新しい話をきいた。クラウドやインターネットを使って、どこでも仕事ができるというのだ。ある方から、徳島県東京本部に視察を申し込んだがまだ返事がないと聞いたので、偶然高校の同級生だった副本部長に、「徳島県内にサテライト・オフィスを持つことに興味のある方々がいるよ。視察実現に向けて、本庁につないでください」と進言した。しばらくして、県内での視察ツアーが始まった。


 また、フリースペースでの雑談で、ダンクソフトW副社長が、「四国といえば空海。僕はおもしろい人にしか興味がないんだ」とおっしゃるので、Wさんのクリエイティブで明晰な頭脳で「おもしろい」と感じそうな人って、神山町で活動するNPO法人グリーンバレーの大南さんだな、と思い、県庁主導の視察時に別行動半日ツアーを企画した。それは、濃密で創造的な会談となり、Wさんを刺激したのは一目瞭然だった。人と人の結び目が生まれ、物語が動き始め、多くの優秀な頭脳が動きだし、結果的に神山町でのサテライト・オフィス事業は見事に展開されて、周知のとおりとなった。


 私は人と人を結ぶ一つのきっかけになっただけだが、その過程は、当初東京に行こうと思った私の目的を具現化してくれるものだった。確かに「結び目」に私の仕事はあった。さらなる学びを糧にしながら、「結び目」から新たなビジネスにつながる仕事づくりが始まる。



活動分野: スモールビジネス・サポート

発揮したインターミディエイターのマインドセット:

☑3分法思考/多元的思考

☑エンパシー能力

□多様性・複雑性の許容

☑エンゲイジメント能力

□エンパワリング能力

☑対話能力

☑物語り能力


Certified Intermediator


中川桐子

スモールビジネスサポーター

セレクトライン代表

1995年、津峯観光株式会社勤務時に、地元である阿南青年会議所に入会。ひとづくり、まちづくり事業に、取り組む。2002年、社団法人阿南青年会議所 第36代理事長に就任。その後、国や徳島県、阿南市などの委員を歴任。

2011年、東京に拠点を置き、徳島県のサテライトオフィス事業に関わる。2016年、徳島に戻り、徳島県の女性起業家支援事業に携わる。現在は、管理、経理、PCのサポートなどの自営業者のビジネスサポートを中心に、人と人とのマッチングによるビジネスマリアージュに取り組んでいる。




Editor

福田 容子

「インターミディエイター」は設樂剛事務所の登録商標です

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