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NARRATIVES
BY INTERMEDIATORS

  • 執筆者の写真インターミディエイター事務局

街で暮らす一人ひとりの願いをかたちに変える、しなやかなコミュニティ - Dialogue with Intermediators #6 イベント・レポート

更新日:2023年5月24日


2022年11月29日に、インターミディエイター3人によるダイアログ・イベントを開催。鈴木悠平、星野晃一郎、峯岸由美子
2022年11月29日に、インターミディエイター3人によるダイアログ・イベントを開催。


顔の見える関係を増やしたい、若い世代に街の歴史を繋ぎたい、地場産業を盛り上げたい……地域・まちづくりに関わる人たちの悩みは尽きません。

ITを活用すれば、イベントを開けば、企業と提携すれば……現状を変えようとたくさんのHowが出てくるけど、どれもしっくり来ない、手応えがない……そんな経験をしたことのある人もおられるかもしれません。


街で暮らす人、働く人、通り過ぎる人、遊びに来る人。その土地で長い時間を過ごしてきた人、これから新しい思い出をつくる人。街でつくられるもの、体験されること、繋げる言葉。ひとつの街、ひとつの地域をよく観察してみると、そこにはたくさんのアクターがいて、関係の網の目の中で日々かかわり合いながら変化し続けています。


どれひとつとして同じ街、同じ地域はないからこそ、「まちづくり」にひとつの正解はなく、その街ならではの歴史と文化、空間のありようを理解し、そこに眠る可能性を活かすための対話と協働が必要です。


「あいだ」の知の担い手として、さまざまな領域で実践を続ける「インターミディエイター」たちと共に、これからの協働社会を描くオンライン・イベント「Dialogue with Intermediators」。


第6回は、藍を媒介に、歴史・文化・空間をつなぎ、街の人の安心を結ぶ「神田藍愛プロジェクト」に関わる2人のインターミディエイター、峯岸由美子さんと星野晃一郎さんをスピーカーに、同じくインターミディエイターの鈴木悠平さんが聞き手となってダイアログを行いました(開催:2022年11月29日)。イベントの様子をレポートします。


table of contents




藍を媒介に、神田の街に「顔の見えるつながり」を編み直す


はじめに、神田藍プロジェクトに関わるインターミディエイターの峯岸由美子さん・星野晃一郎さんの自己紹介・活動紹介です。


峯岸 由美子さん:

「一般社団法人遊心」という団体で、地域の公園などでの自然体験活動を行っています。0歳児から大人まで、誰もが身近な環境で自然と触れ合い、自然から学びながら、しなやかに生きていく力を育む場を目指しています。


今回ご紹介する神田藍のプロジェクトもそのひとつです。


▶神田藍プロジェクト:https://yushin.wearee.jp/kanda-ai


東京都千代田区にある神田のエリアは、江戸時代には各地で栽培された藍が染料になって入ってきて、加工や卸の機能を持つエリアでした。染物職人たちが大勢住んでおり、文化やファッションの発信地として知られていました。現在も「紺屋町」という町名が残っています。

神田紺屋町周辺のマップ
神田紺屋町周辺のマップ (出展:google map)

現在の神田には大きなビルが乱立していて、かつての紺屋町の面影はほとんど残っていません。ただ、古くから神田を地元に住まわれている方々は今も多くおられますし、400年以上続いているお店や会社もあります。一方で、新しいマンションやオフィスが建つなかで、子育て世帯やIT系企業など、新しい世代の人たちも神田に入ってきています。世代をまたいだ繋がりが希薄だったり、隣近所に住んでいる人同士の「顔が見えない」という状況になっていました。私も、東京の谷中という下町で生まれ育っていますが、これは神田に限らず、都市部でよく聞かれる悩みですね。


藍を育てるきっかけになったのは、神田で会社を経営していて、自社ビルで屋上菜園をしていた伊藤純一さんとの出会いです。ビルの屋上など都心の厳しい環境でも育てられて、子どもも大人も、土をいじりながら交流できる植物として、「藍を育ててみませんか?」と提案してスタートしました。もともと藍の栽培地ではありませんでしたが、藍を育てることを通じて、街のつながりが活性化することを考えました。


藍染めは知っていても、実際に藍を育てたことはないという方がほとんどでしたが、みなさんにお声がけをして苗ポッドをお配りしていくと、次第に「○○さんちの藍は育った?」とか「こういうときはどうしたらいいの?」という会話が聞こえてきました。


ビルの屋上、神社や商店街のお店など、色んなところでみんなが藍を育てています。葉っぱを取ってシルク染めをやってみたり、町会のお祭りで子どもたちに種を配ったり、木札をつくったり、街歩きをしたり……。関わる人が増えていくうちに、「こういうことをやりたい」というアイディアが自然発生していって、みんなでワイワイ話しながら形にしていっています。



星野 晃一郎さん:

神田に本社を置くダンクソフトという会社で、デジタル・メディアを活用した地域イノベーションに取り組んでいます。私も都心の育ちで、東京の練馬が長いです。音楽で食べていこうとして27歳まで粘ったのですがダメでした。独学でプログラミングを学んで、今の会社に紹介で入社しました。3年目で社長が亡くなり自分が社長になって、2023年に、創業40周年を迎えます。


2000年頃から、都心ではない地域に拠点をつくる活動をはじめました。石垣島や伊豆高原などでの実証実験を経て、2011年の東日本震災の後、知り合いのつてで徳島県とのご縁が生まれました。そのとき出会った優秀なエンジニアが、家庭の事情で前職を辞めることになり、しかし徳島には働き口がないというタイミングで直談判を受けて、彼を採用して徳島でサテライト・オフィスを始めることにしました。自分はずっと都会しか知らなかったのですが、地域での仕事やコミュニティについて考える機会が増えていきました。


震災やパンデミックを経験して、「隣に誰が住んでいるかわからない」という都市部の危うさを感じていたところ、峯岸さんに声をかけていただいたのがきっかけで神田のプロジェクトに関わることになりました。

去年の春先から、私もオフィスのベランダで藍を育てています。藍は水やりだけで勝手にどんどん育つ強い植物なので、最初はプランターひとつだったのが、取れた種をまいて今は4鉢になり、それからまた次の花が育って種がとれて、ご近所にお配りできるぐらいになりました。


ダンクソフトで育つ藍
ダンクソフトで育つ藍

藍を媒介にして、分断されていた繋がりが結ばれていって、色々な方たちが関わる濃密なコミュニティになっています。みんなで育てた藍を使って、神田の新しいブランドをつくりたいねという話をしていたところ、神田明神さんからの依頼で地元のお土産として藍で染めたスカーフをつくることにもなりました。


神田明神でのイベントで配布された神田藍染のスカーフ
神田明神でのイベントで配布された神田藍染のスカーフ

WeARee!(ウィアリ―)」というダンクソフトのサービスも使っていただいており、アナログとデジタルの融合も進んでいます。


「ひとつ」に限定しない、多様な接点と関わり方をデザインする


2人の話を受けて、同じくインターミディエイターの鈴木悠平さんが聞き手となり、ダイアログを行いました。


鈴木 悠平さん:

神田藍のプロジェクトは、藍染めで何か商品をつくるというような「ものづくり」を目的とするのではなく、藍を配ったり、育てたり、染めたり、街歩きをしたり…と、藍を「媒介」に地域の人たちが出会い関わる多様な接点・機会をつくっているところが面白いなと思いました。

峯岸さん:

いま鈴木さんがおっしゃったように、最初から商品販売のビジネスを目指していたら、きっと全然ちがう活動になっていただろうなと思います。

この神田の街にとって、そしてここに住んでいる方にとって、藍ってどんな存在なんだろう?藍を通してどんなふうに街の文化や歴史が見えてくるだろう?ということを常に意識していました。


藍染めでものづくりやビジネスをできたらいいねという声も、もちろん最初のうちからあったのですが、それは活動の結果のひとつであって、まずは子どもも大人も「面白そう」「やってみようか」と気軽に初められることを大事にしました。


星野さん:

僕は後から神田に引っ越してきた人間なのですが、峯岸さんのフットワークのおかげで、色んな方々と繋いでいただきました。地元老舗企業の東京楠堂さんにも神田藍の会に参加いただいたのですが、社長のお父様が神田の町会長さんで、そこから町会青年部の方たちとも繋がって、5月5日のこどもの日に何かイベントを出来ないかとご相談をいただき、藍の種を配る企画が実現しました。他にも、地元の信用金庫さんが創立100年の節目ということで、地域と繋がる取り組みとして、紺屋町の本店で藍を育てる活動をスタートしたりと、出会う先々で藍を使った企画が形になっています。



神田藍の会のメンバーたち
神田藍の会のメンバーたち

峯岸さん:

地元企業の社長さんもおられれば、町会関係の方、NPOの方、大手企業のまちづくり担当の方など、色んな人たちがおられます。「面白そうな活動だね、○○さんを紹介するよ」と、みなさんあちこちに連れて行って繋いでくださるんです。「藍がだんだんかわいく思えてきた!」とか「うちの屋上で一緒に育ててみない?」とか、藍を育てながらやり取りをされていて、もともと街に眠っていたネットワークの力強さを感じます。


鈴木さん:

もともと知り合い同士だった人もおられれば、神田藍のプロジェクトがきっかけに新たに出会った人たちもおられると思います。世代や立場、関心もさまざまな人たちと関わる上で、どんなことを意識されていますか。

峯岸さん:

意識したことのひとつは、どこかひとつの団体や立場に染まりきらない、どちらにも偏らずバランスの良い立ち位置でいることです。ふたつめは、一人ひとりが持っている悩みや課題意識をよく理解して、神田藍の活動を楽しみながら、自然とそのお悩み解決になるような流れをつくることです。


私自身も下町の生まれ育ちで、出産・子育ても経験しているので、古くから住んでいる方の地元を大切に思う気持ちも、最近引っ越してきたばかりで地域に入りづらいという子育て世帯の気持ちも、どちらもよくわかるんです。藍を手にとって育ててみたら、面白いことが起こるかも、何か変わるかもと、「その気になってもらえる」ような言葉のかけ方や、その人に合った関わり方の提案を意識しています。

神田藍のプロジェクトは、街や自治体から「地域にこういう課題があるから、峯岸さん解決してよ」と言われて始まったわけではないんですよね。だけど、実際に藍を持って皆さんと話をしていくと、地域の防犯・防災や、子育て世帯や高齢者の孤立防止など、一人ひとりが日頃感じている「課題」にリンクしていくんです。「地域の課題を藍が解決しますよ」という入り方をしたわけではないのですが、藍がきっかけになって「顔の見える関係」が広がり、巡り巡って地域の課題解決につながっていくのだと思います。



誰も置いてけぼりにならない、開かれたプロセスをデジタル・メディアで実現


鈴木さん:

日々の活動の記録や情報共有はどのように行っていますか?


星野さん:

プロジェクトの運営に関する会議は、オフラインで集まることもあれば、オンラインで行うこともありますが、毎回録画を「WeAree!(ウィアリー)」というツールにアップして、当日参加できなかった人や後からプロジェクトに参加した人もキャッチアップできるようにしています。頻度や話す内容も、プロジェクトの状況に応じて柔軟に調整していて、月に1回程度の時期もあれば、今後の方向性を話し合うために毎週続けて集中的に開いた時期もあります。



WeAREE!スクリーンショット
WeAREE!というデジタルツールで参加者同士はコミュニケーションをとりあいながら進めいている

峯岸さん:

運営プロセスを隠さないで、街の人たちにオープンにしていますね。記録を残して共有するだけでなく、今回参加していなかったけどちょっと様子が気になるなーという人には、あとで個別に声かけをするなど、困ったことも含めてお互い気軽に話し合えるような場作りを心がけています。まちづくりも植物を育てるのと同じで、1年間、季節が巡る中で色んなお手入れが必要です。


鈴木さん:

アナログもデジタルも両方を活用しながら、全体への呼びかけだけでなく、一人ひとりの様子を見て個別に声かけもして……そういった日々の積み重ねが「顔の見える」コミュニティに繋がっているんですね。


未来を見据えながら、形は柔軟に変えていく


鈴木さん:

みんなで一緒に藍を育てるなかで、色んなアイディアが集まり、次々と企画が形になっていますが、活動を続けていく上での役割や組織づくり、運営資金などはどのように考えておられますか?


峯岸さん:

活動を続けていく上では、メンバーそれぞれが担う役割や、組織の運営方法、資金づくりなどは、やはり必要です。ただ、誰か一人「強いリーダー」がいて、あなたはこうしなさいと引っ張っていくのはこの会には合わないと思っています。そうではなくて、「そろそろこういう決まりをつくった方がいいんじゃないか」とか「峯岸さん頼りないから、私がこれやってあげるわ」とか、メンバーから自発的に声が上がる環境をつくっていくことと、上がってきた声を見逃さず拾っていくことを大事にしています。



ダンクソフトのダイアログ・スペースに集う神田藍プロジェクトのメンバーたち
ダンクソフトのダイアログ・スペースに集う神田藍プロジェクトのメンバーたち

▶ダンクソフトのダイアログ・スペース:https://www.dunksoft.com/message/2021-03



鈴木さん:

活動を続けていくなかで、具体的な問題意識や提案が上がってきたときに、その機会をつかんで展開していく、という感じですね。

星野さん:

プロジェクトが始まった直後にも、会則や会費をどうしようかという話は出たんですが、まだ何も形になっていない段階では、仕組みをどうこう言うよりは、藍を配ってみんなで育ててという「実行」が大事です。色々と活動の結果も出てきて、先日、助成金も申請することにしたのですが、そろそろ会則があった方がいいよねってことで会則もつくりました。必要になったときに必要なものをつくるというのでいいと思っています。


峯岸さん:

今日明日の単発イベントや、1年2年の短期プロジェクトではないので、1度に何から何まで全部決めようとせず、対話を続けながらゆっくりつくっていっています。私は初めから、このプロジェクトに10年は関わるつもりでいて、地元の人たちにもそう話しています。


なので10年ぐらいかかるんじゃないかと思っています。地元の方が、その話をすると、そのつもりがあるのね峯岸さん、今日明日の単発のイベントじゃないのね、とおっしゃいます。


星野さん:

長期的な目線を持ってコミュニティをつくっていくと、結果的にすごく濃密でスピーディーな動きが産まれるのが面白いですね。まだプロジェクトがはじまって2年なのに、もう5年も6年も続いているような感覚です。



「藍」を媒介に、街の「物語」が紡がれていく


世代や仕事、日々の悩みや興味関心もさまざまな、街に関わる一人ひとりの声に耳を傾け、共感し(エンパシー)、多様な人たちが自分に合った関わり方ができる場をつくる(エンゲイジメント)。「多様性の中の対話」を通じてそれぞれの役割を見出していき(エンパワリング)、一つ一つの活動が繋がっていくなかで、新たなコミュニティの「物語」が浮かび上がってくる……。今回お話いただいた神田のプロジェクトは、峯岸さんと星野さん、そしてみんなで育てた「藍」がインターミディエイターとなって、街の新たな可能性を開く活動でした。



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