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NARRATIVES
BY INTERMEDIATORS

  • 執筆者の写真インターミディエイター事務局

大事なことは、他者との関係の中にある ── 平田直大さんインタビュー[中編]


平田直大さん(しまのわ代表、プロモーションうるま事業部長、インターミディエイター)


ビジネスを含め、およそ人間の共同社会は「関係の網の目」の中で成立しています。とりわけ、人間・機械・自然の協働は、人類共通の重要課題です。

 

だからこそ、その「あいだ」に立って、破壊され、毀損され、失われたリンクの数かずを修復、再生、再創造するモノやヒトが必要です。「あいだの知」を担う媒介役を 「インターミディエイター( intermediator )」といいます。誰かの上か前に立とうとする “ 強いリーダー ” ばかりを探し求める人にとっては、じつに見えにくいタイプの存在です。

 

本連載では、この「インターミディエイター」の考え方に通じるプロジェクトや展望をお持ちの方々をお招きし、お話をうかがっていきます。

 

第3回は、「インターミディエイター」(有資格者)として活躍する、平田直大さんです。

前回の「前編」に続き、今回は、「中編」をお届けします。



 

[プロフィール]

平田 直大さん


一般社団法人しまのわ 代表

一般社団法人プロモーションうるま 地域づくり事業部 事業部長

インターミディエイター

 

1984年神奈川県生まれ。大学卒業後都内の情報会社勤務を経て、大学時代の研究テーマであった「中山間地域の維持可能性」に関わりたいと2014年に沖縄に移住。地域活性・プロジェクトデザインを行う会社の役員を3年間務めた後、2017年に沖縄で独立、2023年より一般社団法人プロモーションうるまに参画し現在に至る。県と市町村、市町村と地域住民といった、県内の各主体者の「あいだを繋ぐ」事業領域で奮闘中。

 


── ところで、地域で活動するにあたっては、こうしたインターミディエイターの考え方が有効なのではないかと思うですが?

 

平田: 地域で活動するとなった時には、人の感情とか、生々しい部分が現出しやすいものです。それ自体はいいことだと思うんです。でも、そうなってくると、地域はタコツボ化し、考えが凝り固まってしまうこともありがちですよね。感情的になると相手はこうだと決めてかかってしまい、相手との違いは何にあるのか分からなくなる。こういうことって地域に限らず結構あるんじゃないでしょうか。


そこで、例えば「3分法思考」を発揮して、別のメガネをかけて、別の見方をして、きちんと考えることで、そういう「行き詰まり」を超えることが出来るのではないか。


他にも、例えば、地域で何か物事を進めようとした時に、強固な抵抗にあうこともあります。実はそれが個人的な感情のぶつかりが原因のことも。それを、どうアウフヘーベンして乗り越えていくのかという感覚、つまり2分法的な感覚ではなく、矛盾や対立を超えた、より高次の次元を考えることが、大事だと思っています。


そういう状況下で、私がインターミディエイターのマインドセットの中でも好きなものは、「エンパワリング能力」なんですよね。これがむちゃくちゃ大事かなと思っていて。

 

地域が停滞すると、限界感とか諦め感が生まれがちです。その時には、個人の中にある本当はやりたいと思っていることを、しっかりとエンパワリングしていくことで、新しく物事が進んでいく。逆にそういう働きかけがないと、本当にどんどん地域の元気がなくなっていってしまう。そういった意味でも、インターミディエイターのマインドセットは、地域で活動する中でこそ、非常に生きるかなと思っています。

 

もうひとつ言えば、地域コーディネーターをする方々のなかには、自分がやっているコーディネーターという仕事は価値があるのかと思う方もいます。意義があるかどうかに、自信がなかったり、悩んでしまうこともあると思うんです。


ですが、その時に、インターミディエイターという概念がバッグにある、自分の中にあることによって、“あ、これは間違ってないんだな”と思える。これは正義ということではなくて、自分がやっていることは、こういう概念の上にあるのだと理解できると、悩ましい部分が氷解して、やっていることに自信が持てると思います。


自分のビジョン、自分の中でなぜこれをやるのかについて、自分自身を納得させることにも、このインターミディエイターという概念が非常に役立ち、大切な自分の活動の指針になる、ということですね。

 

── 地域コーディネーターの方が持つフィロソフィーや考え方次第で、ずいぶん活動が変わってくるのではと思いました。地域をつくろうとする伴走者の皆様が、うまく切り盛りできなかった場合には、どんなことが起きてしまうのですか。

 

平田: 地域づくりに関する全国的なネットワークとも関わりがあるのですが、特に若い方々で、地域で頑張っていたけども疲れてしまう、というケースを目にします。活動の意味が見出せなくなって、やめてしまうんです。本来は有能だったり、やる気があったりした人が、スポイルされていく場面を見かけます。


そうして地域で活動する人がいなくなってしまうと、厳しいことが 2 つあります。ひとつは、その人が担っていた役割があるはずなのに、それができなくなることによって、エンパワリングされるべき地域人がエンパワーされなくなりうること。もうひとつは、そんな地域に誰も行きたくないよねとなってしまうことですね。やる気のある伴走者になりえた人を失うのは、地域にとっての損失です。

 

「あいだをつなぐ」ことができたり、地域をエンパワリングできる方が、きちんと自分自身の活動に自信を持てること自体、大事なことなのではないかと思います。

 


── そこが機能しないと、地域にとっては損失ですね。

 

平田: これは大きい損失になると思いますね。県内でも頑張っている方がいらっしゃるので、その方々の活動が、どのような考えのもとに行われているかを陰に陽に後ろ支えしないと、地域からもうがった見方をされてしまうんですよね。


例えば、彼ら自身が有名になろうとしているのでは、とか、彼ら自身が儲けようとしているのでは、とか、そういうためだけでやっているのじゃないかと。頑張っている人こそ、結局は自分のためにやっていると見られてしまう…。


でも、実はそうじゃない人も多い。そこをきちんと伝えるには、インターミディエイターが大事な概念として機能すると思っていて、「あいだとは、他者と他者がいるということ」という認識が広まることが大事だと思うのです。


すべての分野において、“自分だけが”何かすればいいという話ではない。つまり、主語が“自分”ではないことの意味を、どこまで周囲にも分かってもらえるか、なんです。


逆にそれが分かってもらえないと、結局、自分の存在意義が「自らが成し遂げたこと」になってしまい、自分が成し遂げた大きなことで見せようとしてしまうんです。そうなると周囲からは、あれは自分のためにやっているんじゃないかと見られてしまうし、本来やりたかったことと違う方向に行ってしまいます。インターミディエイター的な概念でやっていれば、そうなる手前で、止められることもあるなあと。

 


─ これは、何が欠如しているのでしょうか。

 

平田: 地域コーディネーターも、時には、その地域のことばかりを常に考えていられなくて、自分の生活が大事な局面もあるでしょう。そういうときに、自分の生活が第1 にあると考えるのではなく、「大事なことは、他者との関係の中にある」と考えられるかどうか。多分、そこを支えるフィロソフィーが自分にあるか否かで、表出の仕方が違ってくるのではないかと、お話ししながら思ったところです。

 

ただ、最近、こういうこともあります。日本はここ数年、自然災害が多くなっていますよね。復旧場面で頑張っている地域の仲間がいて、そういう時になってはじめて、この人たちは、実は地域のことを考えてやっていたのだと地域の人が知る、という話を聞いています。


でも、災害のような厳しい場面が起きないと相互理解できないのではなく、日頃からそういう概念でやっていることが周囲に表せていれば、災害は起きなくても、地域のために活動していることが理解されていきます。その結果、地域にきちんと共感が生まれて、エンパワリングしあう状況が生まれてくるんじゃないかと。


 

── もっと手前でお互いに理解し合えれば、苦しい局面が来た時も、一緒に乗り切ることができますね。つまりは、日頃から協働できる状況をつくっておくことだと言えますか?

 

平田: そのためにどう活動していくのか、ということが必要ですね。

 


── 平田さんのようなコーディネイションする立場で、インターミディエイターのマインドセットで、何か 1 つ 2 つ、これは外せないものがあるとすれば?

 

平田: ひとつは、先ほどお話しした「エンパワリング」ですね。「エンパワリング」とは、私は、勇気づけることだと考えています。エンパワリングは、“ing形”がついているので、勇気づけ続けること、ですね。


人間の行動原理には、不安や恐れがあると思うんです。ですから、守ろうとする行動、他者を攻撃する行動、他者を批判する行動などは、知らないことや自分が傷つくことへの恐れや、自分が認められていないことに対する不安の表れだなと考えます。


不安や恐れのある方々に、いや、そうじゃないよ。あなたがやっていることには、とても価値があるよ、とても尊いよ、ということが伝えられれば、その人が他者に向けている負の矛先やトゲの分のパワーを、未来に向けられるんじゃないかなと。エンパワリングというのは、勇気づけ続けることで、パワーをすべて未来に変換していく、という感じかな。

 


── いいですね! そうすることで、人に眠っている可能性を引き出すことになりますね。少し話題が変わりますが、インターミディエイターは、上下ではなく、目線を合わせて、「関係の網の目」のなかで他者と接していくと学びます。沖縄は年長者やリーダー的存在の声が強い地域だと聞きますが、活動する上で難しさを感じますか?

 

平田: 沖縄には、そうでなければやってこられなかった過去もあるとも思います。だからこそ、戦後80年、復帰50年というタイミングまで来られたところはあります。ですので、もちろん一概に否定するわけではないです。


一方で、リーダー・フォロワー論の色は濃いかと思います。これは、閉じられた環境・地域であることからも顕著かとは思うんです。


しかし、だからこそ、エンパワリングすべき方々がたくさんいるのだろうなという気がしますよね。諦めてしまうともったいない方々が、多分たくさんいるはずなので、しっかりもっと、エンパワリングされることが必要な方々とつながり続けたいと思います。


この役割は、ともするとリーダー層と呼ばれる人たちとゴリゴリっとやっていく方が、それっぽく見えることもあるかもしれません。ですが、それでは、これからの地域の未来にとって本当にいいのかといえば、そうではないなと思います。自分がやれる余地がまだまだあると思っています。

 


── 「島の自律」というテーマで、平田さんの役割は大きいですね。

 

平田: どちらかというと、じゃあ、なんでそうなったのか? というところまで、きちんと紐解いてさしあげないといけないのだろうという気がします。よく言うのは、“秋ナスは嫁に食わすな”には、2つの意味があると。嫁いびりだという話と、体を冷やさないようにと心配を表したという話。地域にある言い伝えや伝統は形骸化するものですが、本来的にはどうだったんだろうかをひも解いていくと、みんなでなんでも話しやすくなるのではないかと思います。


 

── そういう過去の経緯がありつつ、それと同時に、未来志向の物語を一緒につくることが合わさると、地域が動いていくでしょうか。

 

平田: ですね。たぶん、過去をひも解くという意味が、過去がこうだったと、単に過去を回想するのではなくて、なぜその時にそうしたんだろう? と、その時のコンテクストに目を向けることが大事かな。過去のその時点には、未来のことを考えて最善を決めたのではないかと思うので。過去をひも解くのも、未来志向でできるのではないかって気が、すごくするんですよね。

 


── そうすると皆さんも安心して、これからの物語づくりに参加できる可能性が広がるかもしれないですね。

 

平田: 否定されたら、それは誰だって話をシャット・アウトしてしまうので。多様性・複雑性にまつわる話をきちんと理解したうえでの「対話」が、大事になるのだと思います。



[後編] につづく…


(2024/5/17, ダイアログと文:松原朋子)


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