「エンパワリング」の実践:人とチームの力を引き出す対話的アプローチ ── 伊藤優さんインタビュー
- インターミディエイター事務局
- 9月6日
- 読了時間: 18分
更新日:9月30日

ビジネスを含め、およそ人間の共同社会は「関係の網の目」の中で成立しています。とりわけ、「人間・機械・自然の協働」は、人類共通の重要課題です。
だからこそ、その「あいだ」に立って、破壊され、毀損され、失われたリンクの数かずを修復、再生、再創造するモノやヒトが必要です。「あいだの知」を担う媒介役を 「インターミディエイター( intermediator )」といいます。誰かの上か前に立とうとする “ 強いリーダー ” ばかりを探し求める人にとっては、じつに見えにくいタイプの存在です。
本連載では、この「インターミディエイター」の考え方に通じるプロジェクトや展望をお持ちの方々をお招きし、お話をうかがっていきます。
第5回は、「インターミディエイター」(有資格者)として活躍する、伊藤優さんとの対話です。
[プロフィール]
伊藤優さん
オフィス・アペゼ 代表
東京大学教養学部卒業後、三菱UFJ銀行を経て、不登校やひきこもりで悩む若者の学習支援事業に取り組むNPO法人キズキ(現株式会社キズキ)に入職。管理部門長として組織づくりに取り組む中で、「人」や「チーム」のあり方が事業に大きな影響を与えることを実感する。その後ボストンコンサルティンググループを経て、2020年に独立。
主に福祉や教育、医療領域のNPOや企業に伴走し、「人」・「チーム」の力を引き出すことを目指した支援を行っている。
本当に価値を感じられる仕事の在り方を模索していたら、自然と独立を選んでいた
── 伊藤さんは、企業、スタートアップ、NPOなどを経て独立されました。どんなエピソードを経て独立に至ったのですか?
伊藤: 実は「よし、独立するぞ!」という強い意気込みがあったわけじゃないんですよ。自分の関心を追求しながら働ける道を探していたら、気付くとフリーランスになっていたという感じなんです。大学卒業後に都市銀行に入社しましたが、メンタルヘルスに興味があったこともあり、不登校や引きこもりの若者支援をするNPOに転職しました。そこで人事の仕事をしていたのですが、経営も学びたくなり、外資系コンサルティング会社に転職。でも、そこでは仕事も人間関係も全然うまくいかなかったんです。論理的思考力に長けた人たちが、データやロジックをもとに徹底的に、そしてスピーディに議論を進めるスタイルが当たり前の環境の中で、私は苦しさを感じていました。今振り返ると、自分はむしろ、事業の現場にいる人たち一人ひとりと対話を重ね、人間性や感情にも触れながら、一緒に事業を作り上げていくような働き方を望んでいたのだと思います。そして、体調を崩して休職したことをきっかけに、できた時間の中で、「自分が本当に価値を感じる仕事って何だろう?」と考えたとき、他者の人生に寄り添うような仕事に魅力を感じていたことに気づいたんです。ですから、企業に転職するよりも、自由にいろんなことをやってみたいと思って、2020年に個人事業主として開業しました。
── それから5年。伊藤さんの情熱を傾けられるようなプロジェクトができていらっしゃるのでしょうか?
伊藤: ずっと模索の連続ですが、とてもありがたいことに、ご縁が複数のプロジェクトに関わらせていただいています。どれも社会にとって大切だと思える取り組みばかりです。NPOや企業のチームに伴走する形で、サポートをしています。内容はプロジェクトによって様々ですが、共通しているのは、関わる人たちが目指す方向により近づけるようにお手伝いすること。それを自分の役割として捉えています。
── 充実していらっしゃるようですね。どのようなプロジェクトがありますか?
伊藤: 例えば、とある福祉系NPOでは、離職率の高さが課題でした。スタッフの皆様との対話を重ねる中で、単なる離職の問題だけでなく、チームの力を、一人ひとりの可能性をどう引き出すかという視点で、一緒に考えながら必要なサポートを行っています。
人間は売上向上のツールではない。敬意をはらい、丁寧に重ねる対話の大切さ
── チームの力や、チームを構成する一人ひとりの力を引き出すうえで、大切にしていることがありますか?
伊藤:はい、現場で働く方々が一番大変だということを、常に忘れないようにしています。コンサルティング的な視点だと、「もっとこうすればいいのに」と外から言う方も多いですよね。ですが、私はそうならないよう意識しています。現場の苦労や思いに敬意を持ち、伴走という立場で、一人ひとりの状況を想像しながら丁寧に関わり、対話することを大切にしています。
── 以前から、“従来型の人事”というものに違和感がおありだということでした。
伊藤: ですので、最近は「人事」という言葉をあまり使わないようにしています。人事には、人間を管理するというニュアンスが含まれていると感じていて、それが自分の考え方とは少し異なります。もちろん人事制度や採用などの支援はしていますが、人をより機能するように管理する発想や、人を事業推進や売上向上のためのツールのように扱うこと、会社のいいように動かす、というようなことではないと考えています。そうではなく、一人ひとりに敬意を持って関わりたいという思いがあるから、違う言葉で仕事を表現するようになりました。
ですので、「人事コンサルですか?」と聞かれることもありますが、あえてコンサルティングという言葉も、使わないようにしています。もちろん素晴らしいコンサル会社も多いですが、私は外からアドバイスするよりも、一緒に走りながら可能性を引き出す関わり方を大切にしたいので、そのスタンスを言葉選びにも反映させています。
人々が集まる場による力や可能性を引き出すことを大切に
── そういう伊藤さんが、「インターミディエイター」という考え方に出会ったのは?
伊藤: このプログラムに参加したのは2020年の秋頃、独立して間もない時期でした。以前から参加されていた鈴木悠平さんの会社を少しお手伝いしていたご縁で、“今後一緒にプロジェクトを進めるなら、共通言語があるといいかもね”と声をかけてもらったんです。最初は生命論マーケティングに参加したのですが、案内を見た時はすぐに内容をイメージできなくて(笑)。でもせっかくの機会ですから、ぜひ受けてみたいと思って参加したのがはじまりでした。
── 「インターミディエイター」という言葉を初めて聞く方もいらっしゃいますが、伊藤さんの言葉で、「インターミディエイター」とは、どんな役割だと考えていらっしゃいますか?
伊藤: インターミディエイターとして大切にしているのは、その場や人の力や可能性、また人々が集まることによる力や可能性を引き出すことです。先ほども少し触れましたが、それが自分にとって一番意識している役割であり、やりがいを感じている部分ですね。
── インターミディエイターの学びが、今のご活動に活かされていると感じるときがありますか?
伊藤: 大きく分けると2つあります。まず1つは、このプログラムでは、インターミディエイターとして大切なマインドセットを学びました。特に印象的だったのが「エンパワリング」という考え方で、人の力を引き出すことを指します。これには終わりがなく、継続的に支えながら可能性を広げていく姿勢を指すため、現在進行形のingをつけて、エンパワリングと呼びます。
また「三分法思考」も重要です。物事を二元的に捉えるのではなく、第三の視点や、もっと多元的に多様な観方をすることで、より柔軟で創造的な関わりができるようになります。こうした考え方は、今も日々のプロジェクトに活かされていると感じています。
── チームの力や、チームを構成する一人ひとりの力を引き出すうえでも、「エンパワリング」は欠かせませんし、従来とは異なる新しい方向を創り出すには、二分法思考を超えて、「三分法思考」「多元的思考」で考えられると、違いが出ますね。
社会に対して感じていた違和感を解消し、新たな価値基準を持つ
伊藤: そうですね。もう一つ、私にとってすごく大きかったのは、新卒として働き始めたころから、漠然と“これっておかしいよな”と感じていたことや、“こうだったらいいのに”と思っていたことに、言葉を与えてもらえた感覚があったことです。たとえば、以前コンサルティング会社にいた頃、売上を伸ばすことが最優先される仕事に、どこかモヤモヤした気持ちを抱いていました。「それって本当に価値があることなんだろうか?」「社会が目指すべきものって、売上だけなのかな?」と、ずっと疑問を感じていたんです。
インターミディエイターのプログラムでは、そうした違和感に対して、「人の力を引き出すこと」や「人の幸福」といった、別の価値のあり方を学ぶことができました。それによって、自分がこれまでやってきたことにも、ちゃんと意味があるんだと感じられるようになり、少しずつ自信を持てるようになっていきました。
── 売上至上主義の中や、上下関係の階層意識が厳しい中では、人の可能性、とくに、弱い立場や、女性・若者・外国人など、若いマインドを持った人たちの可能性が抑えられてしまう。そうした現象を、きっと伊藤さんはたくさん見てこられたのだろうと思いました。
伊藤: インターミディエイターの考え方って、これからの社会のあり方にすごくフィットしているなと感じています。上下関係ではなく、網の目のように人や場がつながり合う社会の中で、どうやって力を発揮していくかという視点がベースになっているんですよね。そうした新しい価値観について、体系的に学べる機会があるというのは、とても貴重なことですね。
── 先ほど話に出ていた「二元論」についても、AかBかという対立的な選択肢ではなく、まったく別の新しいCという選択肢を出す「三分法思考」という思考法があります。プログラムの中でも、AでもBでもないCをどう生み出すかというエクササイズをよく行います。こうした思考法について、伊藤さんのフィールドでも感じるところがありますか?
伊藤: 現場で支援をしていると、いろんな場面に「二元論」が潜んでいると気がつきます。たとえば、上司と部下、経営と現場、支援者と支援を受ける側など、気づくと物事を二つに分けて捉えてしまうことが多いんですよね。そして、何か課題に直面したときも、「やるか、やらないか」といった二択で考えがちです。でも、そうした二元論の枠組みが、葛藤の原因になっているんですよね。だからこそ、AでもBでもない第三の選択肢であるCを見出す「三分法思考」というイノベーション型の思考法が、現場でとても役立ちます。葛藤を超えて、新しい方向を出すことができますから。
対話の先に、生きづらさを軽減し、一人ひとりが可能性を発揮できる社会をつくりたい
── 少し話が変わりますが、企業や団体の中のスタッフとしてではなく、また別の存在として関わることに、意義を感じますか?
伊藤: 最近、自分の立ち位置を表す言葉として「スナフキン的でありたいな」と思うことがよくあります(笑)。チームやコミュニティに対して、一定の距離を保ちながらも、必要に応じて関わるような存在でいたいなと。「第三者」という言葉は少し冷たく聞こえるかもしれませんが、私は“第三の目”として、行き詰まりを感じている場面にこそ、新しい視点を差し出せるような存在でありたいと考えています。場合によっては、三にとどまらず、四でも五でも、もっと多様な視点を提示できたらいいなと感じることもあります。
── プロジェクトの中で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
伊藤: ふとした瞬間に、チームやご一緒している方の変化を感じることがあります。そういう時にすごく嬉しさを覚えます。たとえば最近、1年ほど密に関わっている方が、何気なく「やっぱり対話って大事ですよね」と言ってくれたことがありました。その方はどちらかというと効率重視のタイプで、対話重視というより、スピードや成果を優先する印象が強かったんです。でも、プロジェクトを通じて何度も対話を重ねる中で、自然とその価値に気づいてくれたのかと感じました。ご本人は自分の変化にあまり気づいていないかもしれませんが、その言葉を口にした時の表情がとても柔らかくて、印象的でした。そういう何気ない瞬間に、人の内側で何かが動いたんだなと感じられることが、私にとって大きな喜びです。
── 先ほど、インターミディエイターの役割をお聞きした際に、場や人や集まりの可能性を引き出すこととおっしゃいました。その方と対話を重ねる中でエンパワリングしてきた成果が表れたのですね。そんな伊藤さんが、これから挑戦していきたいことはありますか?
伊藤: 一番の気づきは、やはり「対話」の大切さです。インターミディエイターの学びの中でも対話の重要性を痛感しましたが、実際に現場で実践する中で、その価値を深く実感するようになりました。対話をチームの中に生み出すことで、自然と協働が生まれていく。そのプロセスを、もっと多くのチームの皆さんと一緒に育んでいけたら嬉しいなと思っています。
そして、その先にあるのは、一人ひとりがもっと自分らしく、生きやすくなっていく社会です。私自身、そうした社会づくりに微力ながら貢献したい思いがあります。方法はいろいろあると思いますが、自分に合ったやり方を模索しながら、対話と協働の推進に伴走するような支援を続けていきたいと考えています。
もうひとつ、最近特に強く感じているのが、若い世代の「生きづらさ」への関心です。3年ほど前に出産を経験したことも影響していると思うのですが、若い方が自分らしく生きられる社会を、もっと意識的につくっていく必要があるのではないかと感じています。
昨年は子どもの自殺者数が過去最多だったというニュースもありました。そうした現状に対して、何か少しでも力になれたらという思いがあります。若い人たちの生きづらさを少しでも軽くするために、そういった取り組みをされている方々とご一緒できたら嬉しいなという理想があります。
少なくとも今の日本では、さまざまな場面に「生きづらさ」が存在していると感じます。ただ、生きづらくないだけではなくて、その人自身が自分を大切にしながら、自分の可能性を発揮していくことができる社会になっていったらいいなと、心から思っています。

安心できる環境での対話、そして、自分を支える概念との出会いが、自信をもたらした
── ところで、「インターミディエイター講座」や「フォーラム」、そして「生命論マーケティング」など、伊藤さんは世界構想プログラムにいろいろと参加されています。どんな魅力がありますか?
伊藤: 「インターミディエイター・プログラム」で一番大きく感じるのは、「安心できる環境で対話ができること」ですね。この場は、まさに“開かれた対話と創造の場”のあり方が体現されています。開かれていて、誰もが受け入れられている感覚があって、対話が自然に生まれる。そんな空気感がとても心地よいんです。
それは、「一人十色」という言葉がぴったりくるような。「一人十色」とは、同じ人であってもコンテクストに応じて異なる自分がいるという意味で、自分自身の多様さを表しています。多様な人たちが多様なまま存在できる場だということが、魅力の一つですね。だからこそ、私自身もその場に行くと、自然と何でも話せる気持ちになれますし、自分が本来目指したいあり方に立ち戻れる感覚があります。「インターミディエイター・フォーラム」でも、皆さんと会うたびに、そんな場の力を改めて感じています。
── プログラムを主宰している設樂先生については、どんな印象を持たれていますか?
伊藤: 設樂先生は本当に対話的な方なんですよね。その場の一人ひとりに、とても温かい眼差しを持って、興味を持って、迎え入れてくださって。かつ、かける言葉が、言葉遣い含めてその人その人に合わせた言葉なのです。それこそ、インターミディエイターの対話能力などマインドセットを、先生ご自身が体現されているのだなと思っています。
もう一つは、認定資格の更新時に実施する個別対話の際に、毎年いただく言葉が本当にお守りのようになっているんです。去年は、「インクリメンタル・イノベーション」という概念をいただきました。ゆっくり徐々に起こるイノベーションのことで、焦らずにゆっくりでいいのだ、ということを言っていただきました。それが、すごく今の自分の支えになっています。
── 特にインターミディエイターの学びを経て、自分自身に何か変化を感じられたり、周囲から変わったねというような反応があったりしませんか?
伊藤: そうですね、変化として感じるのは、自分で“これに価値がある”と感じていたものについて、本当にそれは価値があるのだと自信を持てるようになったことですね。平田直大さんや中川桐子さんのインタビューをお読みした時も、同じ経験をされていると思いました。自分が大事にしたいことに言葉を与えてもらった感じといいますか。それまでは、自分は中途半端だと思っていたんです。売り上げを目指してゴリッとしたこともできなくて、深い専門性があるわけでもなく、中途半端な人間だなという自己認識でした。ですが、このプログラムの学びを何年か継続していく中で、これからの社会で重要な概念をいろいろと学び、自分が考えているものに価値があると、認識できるようになりました。これは大きかったなと思います。
周囲からは、去年ぐらいから、数年前に比べてすごい楽しそうになったと、よく言われるようになりました(笑)。3、4年ぶりぐらいに会った方々には、すごい全然変わった?楽しそうだね、と、複数の方々から言われましたね。自分では、その感じが外まで出ているとは思っていなかったんですが、自信というか、何か言葉を与えられたことで価値があると思えるようになったことは、自分が楽しく生き生きできることにも繋がっているなと考えています。
── 私も、実はそう思っていました。昨年、インターミディエイター・フォーラム」の時に、フォトグラファーが撮影した写真を見て、伊藤さんが輝いているな!と思ったのですよ。参加したての頃はもっと硬い表情をなさっていたかもしれないですね。
伊藤:そうですね。自分でもびっくりしました。

出産・子育ての経験が、学びを重層的に深める機会に
── 近年は、息子さんが出現したことも、何か生活やお仕事へのいい効果なのかもしれないですね。
伊藤: それは本当に。彼の存在もすごく大きいです。彼がいることによって、例えば最近で言うと、子育て関連の本を読んだり、興味がある有識者の話を聞いたりする中で、子育ては、自分自身が日々やろうとしているチームのエンパワリングと似ているなと思うんです。学校の教員を長くされていた方の発信だったんですが、子育ては、要は子供を変えようとするのではなく、自分の心を変えることだ、と。すごく腑に落ちましたし、大事だなと思い始めたところです。
── 対話は、お互いに変化していくプロセスであるということを、今のお話から思い出しました。親が教えるのではなく親も変化する。部下に指示・命令し、教えるのではなく、対話しながら一緒に変化していく。これがエンパワリングでもありますね。考え方が重層的になっていくような、厚みが増していくようなことで、いいですね。
伊藤: 共通する大切なことがあるなと感じています。
世の中をどう認識するのか。感じる素直な違和感を、率直に対話し、学びあう
── 最後に、これから「インターミディエイター講座」を受講してみようかという方に、メッセージをお願いします。
伊藤: 今、周りの人が当たり前だと言うことに、釈然としない感覚を持っていたり、自分の中に引っかかりがあったりする方には、特におすすめです。講座の内容にも、ラーニング・コミュニティにも、考えるヒントがたくさんあります。自分が感じる素直な違和感について、とても率直に話すことができて、かつ、それを対話を通じて熟成させることができる場だと思うので。他の人が当たり前と思っていることへ違うと思うことは、その人らしさの表れだと思います。ぜひそういう部分を大事にできる場だからこそ、参加してほしいと思っています。
── 迷っている人がいたら?
伊藤: 迷っていたら、何に迷っているのかを深く伺ってみたいですね。迷っているのは、何かに引っかかっていたり、気になっているということ。この場は、特定の思想を押し付ける場などでは全くなく、この場自体が良質な対話の場です。ある種、ハードルは低いと思いますね。何かをめちゃくちゃインプットしにくるような感覚ではなくて、まさに気になっている自分の感覚を解きほぐしに来よう、というような柔らかい感覚で来ることができる場ですね。
── なにか特定の課題を感じていなくても、漠然とした違和感さえあれば、講座やフォーラムが役に立つ、ということでしょうか?(笑)
伊藤: インターミディエイターの講座って、インターミディエイターとしての役割やマインドセットについてもちろん学びます。ですが、その背景にある「深層のパラダイム」を学ぶことができることが重要です。世界認識というか、社会や世の中をどう認識するかという深層の価値観について考えることができる、みんなで共に学べる場だと思うんですよね。で、多分そういう引っかかりは、割とその人自身の深層の物語が、周りの人の深層と食い違っていることから生まれるのだと想像していて。私自身はプログラムに参加して、そういうことを考えられたことがよかったです。大事にしたい言葉や概念をいただいたのが、自分自身大きかったですね。
── これからを支える大事な概念を学べることは、よりよい未来をつくろうとするときには、有効ですね。
伊藤: つくづく思うのが、人間はわかりやすいものが好きだなって。わかりやすいから、つい二元論になってしまうのだろうなと。ですが、パッとわかりにくいし、キャッチーではないけれど、ここには、「開かれた対話」や「多元的に考えること」など、本質的な概念が詰まっていると思います。このすごさを人にお伝えするのがなかなか難しくて、自分自身でも葛藤はありつつ、でもそういうことをご一緒できる仲間が増えたら嬉しいですね。
── 伊藤さんは問いを立てて思考を進めることがお上手なので、この対話も永遠に続けられそうです(笑)。まだまだダイアログしたいところですが、今日はここまでにいたします。
伊藤: こちらこそ、たのしいひと時でした。
── またぜひアップデートを聞かせてください。ありがとうございました!
収録:2025/4/17
写真:後藤由加里、濱上隆道
ダイアログ、文:松原朋子
●伊藤優さんとのダイアログ・レポート






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