インターミディエイター事務局
都会のこんがらがった糸をほどいていく
更新日:1月4日
峯岸由美子 一般社団法人遊心 代表理事
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問題だらけのスタート
保育園の待機児童数の増加と同様、小学校入学後の放課後の子どもの居場所も、子育て家庭にとって大きな問題である。国はここ数年大きな改革に乗り出し、子ども子育て支援制度や放課後対策の方針を打ち出した。それに伴い、T区においても全小学校内に放課後子供教室の設置を決めた。それは、学校内で全年齢を対象に放課後預かる制度だ。コーディネーターの設置が義務付けられていることから、私が役目を担うこととなった。
その小学校での放課後子供教室では、設置時に地域との話し合いが十分とは言えず、課題を抱えた状態での開設だった。PTA、教員、事業者、区。それぞれの立場によって、子どもへの対応、プログラムの在り方への意見が異なり、関わるもの同士の信頼関係が構築しきれておらず、見解の不一致が見られた。ここに場所を貸してくれている学校が加わり、さらに実際に現場で動いているのは当の「子どもたち」だった。当初は、子どもたちの一部は、環境の変化からか荒れてしまうことがあり、ケンカやトラブルも少なくなかった。
変化の糸口
私が担ったコーディネーターという役割は、当初「人を紹介する人」という位置づけの見解で、あまり重要視されていないように感じた。他の子供教室ではコーディネーターは元PTAが担い、子どもたちと遊ぶ先生役になっていた。本当のコーディネーターはそれだけが役割ではないはずだ。私はインターミディエイターとなるべく、立ち位置を変えることから始めた。(その時はこの言葉を知らなかったので本当のコーディネーターと呼んでいた)
B先生からは、子ども一人一人の様子を聞き、教員からの情報ともすり合わせるようにした。教室ビジョンを策定し、教室に貼りだした。便りもPTA会長やPTAが分かるようにつくりかえ、掲示物も制作した。それを都度PTA会長に伝えた。PTA会長の話を聞き、それを伝わる言葉に変えてB先生や事業者に伝える。PTA会長側の意見はよくよく聞くと、B先生や事業者へではなくて、別のことに対する不満であることもあった。

たとえば、「事業者にはやめてもらいたい」「本当はこの事業自体がなくてもいい」といったPTA会長側も、よく話を聞くと「子どものためを思って一番なことをしてほしい」という一心からの意見であることがわかった。B先生はPTA会長に気を使いすぎて思うように動けず、他のスタッフもストレスが増加して体調を崩す人がでていた。B先生の話をきくと、心理的な壁の原因は、各方面との関係のすれ違いによるものであることもあった。
私の役目は、ひとつひとつのこんがらがった糸をほどいて、元にある課題をはっきりさせること。その課題を本当に対応すべき人に、その人にわかる言葉で伝えることだった。伝える相手は、時にはPTA会長、時にはB先生、時には区に。あるときは学校の保険医の先生というときもあれば、地域の人ということもあったし、事業者の責任者もあった。
B先生は「自分たちは子どもたちの安全安心を第一にやりたいんだ」と発言するようになっていた。「子どもたちのために」というキーワードで、PTA側とB先生がつながった瞬間だった。

求められている役割は
この事業では、「地域のボランティアを活用して教室運営する」という区からの方針があった。本来の私の役割は、教室内で実施するプログラムのボランティアを紹介することだった。地域の体育協会、〇〇連盟、〇〇委員、紹介できるところは紹介をしていたが、地元の方が直接ボランティアで見守りに入ってくださることはなかった。彼らからはこんな声があがっていた。「学校という場所が、敷居が高くて行きづらい」。土地柄地域の人との関りが強い地域であり、祭りやイベントごとにはたくさんの地域の人が集まってくる。それでも学校に入るのはハードルが高いのだという。
どうしたらよいか悩んでいるとき、PTA会長から「私が太鼓を教えます」と手があがった。B先生から「将棋教室の先生を探しました」と報告がきた。気が付くと、教室は毎日たくさんの大会が開かれ、掲示版には子どもたちの作品が並ぶようになった。
相対するかに見えた人たちが、思いを一つにし、それぞれが自分の役割を見せるのには、ある程度の距離をとることも必要だと思った。お互いが客観視できるようになると、心に余裕がうまれ、自分の考えを自発的にだせるようになってくる。インターミディエイターとして、その自発的な行動を促すための「空間的・時間的」距離のバランスをとってあげることも大切ではないかと思っている。
活動分野: 自然体験活動の広がり
発揮したインターミディエイターのマインドセット:
☑3分法思考/多元的思考
☑エンパシー能力
☑多様性・複雑性の許容
☑エンパワリング能力
☑対話能力
□物語り能力
☑エンゲイジメント能力
Certified Intermediator
峯岸由美子
一般社団法人遊心
代表理事

中学時代に手にした「東京大空襲」の書籍がきっかけとなり、大学で国際関係論を専攻する。92年ブラジル地球サミットの市民連絡会で紹介された環境教育「ネイチャーゲーム」にはまり、これで生きていこうときめて28年。この間、自然体験活動、自然学校運営・指導・指導者養成事業に携わる。人材育成、幼児・家庭教育をベースに「遊心メソッド」を開発し、2010年一般社団法人遊心を設立する。「遊心®」は、生活につながる身近な自然の中で、子どもと家族のしなやかに生きる力を引き出し、自然や人を愛しいと思う心豊かな人材を育てる法人です。
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