top of page
モダンなカフェ

NARRATIVE
by intermediators

  • 執筆者の写真インターミディエイター事務局

対立構造を乗り越えて新しい価値を ~「遊心」設立~

更新日:1月4日

峯岸由美子 一般社団法人遊心 代表理事


#自然体験 #学習 #子供 #家族 #都会 #自然 #対立 #上野公園 #遊心 #峯岸由美子

はじまりは前途多難


 少子化にもかかわらず、都市部においては人口が微増している。都会で子育てをする家庭にとって自然や外で遊ぶことは、時間・空間・仲間が少なく、とてもハードルが高い。しかしながら「自然体験」から得られる学びは、子どもたちにとってとても重要で効果のあることが実践的にわかっていた。さらにもっと日常的に自然体験ができる環境を設定しようと、2010年、一般社団法人「遊心」の設立に動いた。


 スタート時の対立構造はたくさんあった。 ①都会―田舎、②自然がないー自然がある、③大人―子ども、④管理保育―自由保育などなど。都会では人が多すぎ自然を味わえない。田舎はイベントの集客ができない。業界の仲間からは「東京なんてしょせんミクロの自然」と言われ、都心の公園で自然体験をやっている仲間はほとんどいなかった。保育園の先生は「外遊びは危険だ」と言い、遊びをテーマにしたNPO団体は「子どもにプログラムがある管理は必要ない。もっと自由に外で遊ばせるべきだ」と言っていた。大人は子どもを預かってくれる場所を探し、子どもは多種多様に富んでいた。



試練・葛藤・拡がり


 それぞれの立場の考えを、一切対立せず、いったん受け止めてみた。ただこの構造の中にいても解決はしない。別の立ち位置に変えた。それが「都会の自然・街なかの自然」「親子でなく家族一緒」「プログラムは作るが個別展開する」というものだった。ついでに誰もやっていなかった「0歳から」というのも入れて、今ある構造から離れてみることにした。これで自分の立ち位置が明確になった。とはいえ、まだその立ち位置を変えただけだった。

上野公園でのイベントは当初参加者1組、スタッフも私1名。このままそれが続くと活動は継続しない。資金もない。人もいない。単なるイベント屋ではだめなのだと気づいたとき、大手自動車会社の助成金を受けるチャンスが巡ってくる。


 後ろから背中を押されて前に進むのだが、一人ではどうにもならず、仲間が必要なことに気付いた。園内の関係団体を訪問し、動物園・博物館等とのタイアップを模索したら、都会ならでは強みがうまれた。公園を隅々まで歩くと、保全活動をしているボランティア団体と知り合いになり、どのエリアでも自然があることに気付く。区内の保育園・幼稚園園長会に出向き、全園にチラシを5000枚配った。教育長から他区の教育委員会へ話をつないでもらい、集客が動きだす。蓋を開けると、全12回のイベントに、毎回150名を超える親子の応募があった。



それぞれの役割


 次にイベント・スタッフを集める。環境教育のリーダー、家庭的保育士、大学のサークル、PTA、社会福祉協議会と、仲間にもそうでない人にも声をかけ、事業理念に共感する人を集めた。今までにやっていない対象年齢、場所だったので、人材育成を繰り返した。スタッフの育成には時間がかかったが、スタッフの質だけは落としてはいけないと教育関係者からのアドバイスをもらっていた。


 関わり始めた団体や個人と話していると、それぞれに悩みや課題がある。創客、高齢化による次世代への引継ぎ、職員のスキルアップ、自然環境破壊に地域の設備の修復。対立しているのもあれば、交じり合わないというのもあり、多様性に富んでいる。そうだ、これが都会だと思う。


 しかし一旦事業が動き出すと、自然がないと思っていた人からは「田舎にいかなくてもこんなに生き物がいるんだ」と驚かれ、大人からは「自分の子どもがこんなに一人であそべるなんて」、子どもからは「パパママともっと遊びたい」と言ってもらえた。園長からは「公園で遊べるなんて嬉しい!」と喜ばれ、NPO団体からは「こういった自然体験プログラムもあるんだ」と理解してもらうようになり始めていた。




想定外の出来事


 野外での活動は何がおこるかわからない。安全に十分配慮しても100%絶対がない。この助成金イベントが決まり、イベント告知とスタッフ研修も終わり、地域の人が変化を起こし始め、上野公園で自然体験をやっていると声をかけてもらえるようになり始めた時――その時、3.11が起きる。


 イベントの初回スタートは3月上旬だった。公園の被害はなかったが放射能関連で調査対象となっていた。親から新たな声があがった。「こんな時に野外で活動するなんて」。別の声もあった。「東京で暮らしいて心配するなんて気を使いすぎ」。もっと違う声もあった。「いつ地震がくるかわからず不安なので、誰かに会っていたい」。


  そこで公園内10か所で、毎日ガイガーカウンターで数値を図り、利用できる場所を探した。保護者や近隣団体にも声がけして意見を募り、日程も変更した。最終的には「保護者の判断」で出欠を決めてもらい、全12回を無事に終えることができた。



 

活動分野: 自然体験活動の広がり

発揮したインターミディエイターのマインドセット:

 ☑3分法思考/多元的思考

 ☑エンパシー能力

 ☑多様性・複雑性の許容

 ☑エンパワリング能力

 ☑対話能力

 □物語り能力

 ☑エンゲイジメント能力



 

Certified Intermediator


峯岸由美子

一般社団法人遊心

代表理事


中学時代に手にした「東京大空襲」の書籍がきっかけとなり、大学で国際関係論を専攻する。92年ブラジル地球サミットの市民連絡会で紹介された環境教育「ネイチャーゲーム」にはまり、これで生きていこうときめて28年。この間、自然体験活動、自然学校運営・指導・指導者養成事業に携わる。人材育成、幼児・家庭教育をベースに「遊心メソッド」を開発し、2010年一般社団法人遊心を設立する。「遊心®」は、生活につながる身近な自然の中で、子どもと家族のしなやかに生きる力を引き出し、自然や人を愛しいと思う心豊かな人材を育てる法人です。


Links

一般社団法人遊心

遊心ファンクラブオフィシャルサイト

遊心Facebook

bottom of page