【対談】 対話的プロセスが、「クレーマー」を「参加者」に変える

楠 宏太郎 (公益財団法人 日本生産性本部) × 峯岸由美子 (一般社団法人遊心 代表理事)

#自然 #子供 #対話 #コミュニティ

毎月13日は「イ(1)ンターミ(3)ディエイターの日」。インターミディエイター®たちが、月に1度、オンラインで顔を合わせ、Co-learningする。2020年初の「インターミディエイターの日」は、公益財団法人 日本生産性本部 楠宏太郎氏と、一般社団法人 遊心 代表理事の峯岸由美子氏により、「身のまわりの自然」をめぐるダイアログとなった。



楠宏太郎(以下、楠) 峯岸さんは、自然の中でお子さんの学びあいの活動をなさっているのですよね。


峯岸由美子(以下、峯岸) そうなんです。昨年、一般社団法人「遊心」をはじめてちょうど10周年だったんです。今年から、すでにこれからの10年に向けた活動がはじまっていて、新たに定款なども書き換えていこうとしています。


 僕も、対象は異なりますが、企業に所属する大人を対象に、互いに学びあえる環境をつくっているところですから、共通していますね。


峯岸 そうですね。対象は子供たちや親子で、年間100本の自然体験イベントを実施してきました。「インターミディエイター」になったのが2018年で、そこから自分のやってきたことが次第次第に整理されて、明確になってきました。そこで今年からは、全面的に「インターミディエイター」型の活動にシフトしようとしています。


 僕は、昨年「インターミディエイター」という概念に出会って、自分としてどのような活動をしていくか模索しているところではありますが、日常の中に、その芽がいろいろとあるのではないかと思っているんですよ。

そういう意味では、もうひとつ、峯岸さんとの接点がありますよ。いま、マンションの管理組合をやっているんですが、これが黙っていると、めちゃくちゃいろいろな案件が舞い込んでくるんです(笑)。そのなかのひとつとして、「自然と子供」をテーマにした話が出ていましてね。


峯岸 へえ、そうなんですね!


 マンションの敷地に雑木林がありまして、1998年にマンションが建ってから、そのまま手付かずに残っているんです。市の自然保存区域にもなっています。そこを、そのままにしておくのではなく、住民のために意味のある空間にしていきたいという人たちがでてきました。


地域に、近所の子供たちを集めて、ドングリから苗木を育てるプロジェクトを何度も実施されている女性がいまして、苗木がたまってきたんだそうです。その苗木を、雑木林のヘリに植えれば、子供たちが大人になって帰ってきたときに、ドングリの木が育っていて、かつての思い出がよみがえる、というようなことをやりたいね、と。



峯岸 それは楽しそうですね。


 そうなんです。近隣で活動する緑のサポーターという方たちとも一緒になって、ドングリの木を植えたり、サクラを植えたり、住民が足を運びたいと思える空間をつくったり、イベントを企画したりしていけたらいいのではないか、という話があります。ただ、マンションの管理組合としては、いま、理事長なんですがね、これを誰がやるの?という話になるんですね。言い出した人が責任をもってちゃんとやってくれるのか、ということにすぐなる。住民間の利害関係を相互に調整しなければならなくなる、ということがあります。


峯岸 理事長は「インターミディエイター」として関わるわけですね(笑)


 ええ。理事長だからといって、上から何かものを言うのではなくて、住民と住民のあいだに立って、そこから次を展開してみたいです。結論ありきではないので、今のところはまだどうなるかですが、そういうテーマがあがっていること自体、おもしろいなあと思っています。


峯岸 私も、理事会ではないですが、マンションだったり、公園だったり。そこを利用する人、住んでいる人、地域の人が集まって、何かやらないとね、となるんですよね。そうした活動を支援する側ですから、似たような経験はたくさんあります(笑)


でも、ビジョン・夢・ストーリーを描くことと、実際にことを進める運営や管理は別で、いつも、実行面はどうするの?って話になります。そこのところの話し合いが重要ですよね。

楠さんがおっしゃるように、言い出した人がやるというスタイルにしてしまうと続きません。皆さんがそれにコミットする状態をつくること、つまり、段取りというか、下準備というか。多方向との対話が欠かせません


1~2年はかかると思うんです。

でも、対話を続けていく必要があります。そこには、お金も発生するし、運営する人手も発生するし。誰がやるというよりも、私がやりましょうか、と、手を挙げてもらえるような環境を、徐々につくっていくのが大事ですね。


 言い出したその人だけではなく、なにかのコミュニティがそれを支えていくということが必要ですよね。


峯岸 はい、その人だけなら続かないし、負担の大きなことだと思うので。周りの人が、それだったら私もできる!というような小さな役割に分解して、多様な役割をつくる。実はイベント当日以外の、周りの要素・作業が、いろいろあるんですよね。たとえば、水をあげるだけでもいいし、アイディアを出すだけでもいいし、人に声をかけるだけでもいいし。そういう役割が本当に大切なんですよ、と言い続けてさしあげないと、裏方は目立たないので、だんだん嫌になってしまうんですね。


 インターミディエイターのマインドセットでいえば、どうやって参加・関与してもらえる状況をつくるかという、エンゲイジメント能力ですよね。


峯岸 ええ。そういう方向にもっていくのが、楠さんの役割なのかなと思います。


 そうやって、発案者の女性が出したアイディアを、実現に向けて環境整備しながら動いていくというのも、インターミディエイターの仕事のひとつかもしれませんね。

ただでもね(笑)、理事会という立場では、それをちゃんとやろうとすると、ハードルが高いんですね。どうしてかというと、マンションって、お互いがお互いのことに関心を持たないんですよ。関心を持つときというのは、なにかクレームがあるときなんです。つまり、マンションでの交流というのが、つねに怒りをベースにしているんですね。管理組合は怒りを受けとめる立場で、だから誰もやりたくない。そういうなかで、新しいことを動かそうとするのは、しんどいですよね。


峯岸 そうですね、管理組合やその発案者の女性が、活動やクレームを全部うけてしまうとしんどくて、つぶれてしまいますね。


ただ、クレームをする人は、実は、興味があるかただともいえるんですよね。コミットする可能性のある方々です。クレームという名の話を聞いてほしい、ということもあります。

なので、最初はクレームだらけで言いたいことを言いっぱなしかもしれません。


でも、そこを丁寧に聞いて、対話を続けます。そうすると、「しょうがないや、俺が動くよ」、という人が出てくるようになります、一定の時間はかかるかもしれませんが。


クレームをおっしゃっていた人の中から、一転、運営に参加する人が出てきてそこをコーディネイトしていくことができるようになる。じっくり対話を重ねてちょっと後押ししてあげながら、場をつくっていくというか。


 そういうのが、インターミディエイターの役割だと思いますね。相手の話に耳を傾けたり、小さな役割をつくったりすることは、一人ひとりを「エンパワリング」することでもありますね。本当にその通りで、実直にやろうとすると、いまおっしゃったようなことになるんだろう、と思います。


峯岸 “俺が、私が、これをやるのでついてこい”、というのでは、もういまは動かないと思いますね。ましてや、クレーマーが参加者に転換することは、まずないとおもいます。最初は、「ついてこい」というスタイルのほうが、一見スピードが速いかもしれないけれど、1年、2年経つと、活動がしぼんで、つぶれていくのをいっぱい見てきました。先々の持続可能性を考えると、皆さんの中から自発的に、自律的に、というほうがいいですよね。


 「インターミディエイター講座」では強いリーダーはかえってイノベーションを阻害する、という話を聞きましたが、こういうプロジェクトは、一人の剛腕型リーダーに頼ってはサステナブルではないですね。だから、そうやって代々、先送りになったまま、20年間、雑木林は手つかずになってきたのですよ。


峯岸 でも、見方を変えると、20年以上も手づかずの雑木林がマンションの敷地内に温存されているなんて、すてきなことじゃないですか?自然を中心にコミュニティを生みだせる価値と可能性が、そこにありますし。


その自然の価値を含めて、自然とともにあるマンションの「物語」を皆さんで描かれたらいかがでしょうか。関心を寄せずそのままにしてきた雑木林を、住民がもっと大切にして、一人ひとりにとって意味のある場として育んでいこうという気持ちになるのではないでしょうか。


 そう、「物語」ね!どうやって物語を共有できるかってことですね。そういう物語を共有するということが、クレームや怒りをベースにしたマンションの管理組合という場では、難しいことでもありますが(笑)。


峯岸 できるだけ多様な人たちが参加して、集合知的にストーリーをつくっていくことが、共有のプロセスにもなりますよね!しかも、それを実現するような活動が、より具体的に見えてくるかもしれませんよ。ただ理事長として、楠さんにはきっと期限がおありですよね。


 ええ、もう数カ月のうちには交代になります。なにか、自然と共生するマンションの物語が、住民の皆さんとともに語れるように働きかけてみたいと思います。いま、地球環境に人々の目も改めて向いてきたことですしね。


峯岸 はい、またご様子を、ぜひ聞かせてください。


 また続きをお話しましょう。




(Interview & text by 松原朋子)


活動分野: 自治会、身近な自然

発揮したインターミディエイターのマインドセット:

 □3分法思考/多元的思考

 ☑エンパシー能力

 ☑多様性・複雑性の許容

 ☑エンパワリング能力

 ☑対話能力

 ☑物語り能力

 ☑エンゲイジメント能力



Certified Intermediator


楠 宏太郎

公益財団法人 日本生産性本部


1962年東京生まれ。北海道大学文学部行動科学科卒。大学卒業後、一般財団法人 日本生産性本部にて、働く人のメンタルヘルスをテーマにして3年間勤務。1989年、留学を希望して退職。1990年John F. Kennedy University大学院のInterdisciplinary Studies of Consciousness 専攻に入学。1993年に修了。私設研究所にて活動後、1996年、日本生産性本部に再入職。メンタルヘルス研究所、社会労働部、経営開発部にて主に企画・研修や、研修プログラムの開発・運営に従事している。




峯岸由美子 一般社団法人遊心 代表理事


中学時代に手にした「東京大空襲」の書籍がきっかけとなり、大学で国際関係論を専攻する。92年ブラジル地球サミットの市民連絡会で紹介された環境教育「ネイチャーゲーム」に出会って以来28年間、自然にかかわる事業に従事。自然体験活動、自然学校運営・指導・指導者養成事業に携わる。人材育成、幼児・家庭教育をベースに「遊心メソッド」を開発し、2010年に一般社団法人「遊心」を設立する。「遊心®」は、生活につながる身近な自然の中で、子どもと家族のしなやかに生きる力を引き出し、自然や人を愛しいと思う、心豊かな人間を育てる事業を様々に実施している。


Links

一般社団法人遊心 遊心ファンクラブオフィシャルサイト 遊心Facebook


「インターミディエイター」は設樂剛事務所の登録商標です

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