パラダイム転換へ向けて、人と人がつながる研修をつくる

最終更新: 3月5日

楠 宏太郎 公益財団法人 日本生産性本部

#関係構築 #ワークショップ #経営 #パラダイム転換 #対話

組織内外の関係構築に貢献したい



 わたしの勤務する日本生産性本部では、企業内研修を企画・実施する場合、その内容は階層別のマネジメント研修か、ハラスメントなどの特定テーマを扱ったものかに通常は分けられます。企業研修は、各企業で人事部の研修を担当している人が組織の事情に合わせて企画を依頼します。我々はその案件を委託するかたちで仕事を受注しています。

 依頼された内容が階層別のマネジメント研修の場合は、すでに公開されている研修の内容をベースにして企画をすることになります。特定テーマを扱ったものであれば、過去にそのテーマを扱ったことのある講師に連絡をとり、企画を依頼します。


 この仕事の流れの中では、組織内外での関係構築をうながす動きはほとんど生まれません。研修は知識・スキルを拡大するための集合教育の場です。そのため、学校教育と同じく、個々の心の内面に触れることのできる能力を持ち合わせていません。そうしたことは射程外なのだと考えられます。


 しかし、わたしは企業研修の仕事をする上で、つねに組織の関係構築を念頭に置くことが大切だと考えてきました。いつも思う通りにはならない仕事の現状の中にあっても、可能なかぎり研修の場をワークショップとして活用し、組織の関係構築に貢献することを重視しています。



第3カーブへ、ビジネス・パラダイムの転換

 一方で、近年では、政府も経済政策の一環として、企業の人材育成支援に積極的に取り組んでいます。厚生労働省は、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構において、民間人材等を活用した在職者訓練を拡充するとともに、全国の職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)等に「生産性向上人材育成支援センター」を設置しています。そうすることで、在職者訓練のコーディネート等の事業主支援の充実を図り、中小企業等の労働生産性向上に向けた人材育成を支援しているのです。人手不足の深刻化や技術革新の進展の中で事業展開を図るためには、従業員を育成するとともに、労働生産性を高めていくことが必要との認識にもとづいています。


 企業研修の目的は産業の発展です。内容は政府施策のものを含めてすべて第1カーブのビジネス原理である「造って、売る」という活動を念頭に置いたものになっています。わたしはここに“組織内外の関係構築をしていく動き”をもたらしたいと考えています。そうすることによって、第2カーブ(「感じ取って対応する」)、第3カーブ(開かれた対話と創造の場)へのビジネス・パラダイムの転換が促進されるからです。



混沌から対話へ。3つの可能性の芽を育むプロセス

 2019年7月にポリテクセンターが日本生産性本部を研修事業者として活用して、ある企業の研修を企画・実施するというプロジェクトがありました。その最初のミーティングには、クライアント企業の副社長とポリテクセンターから3名、そして日本生産性本部からはわたしを含めて2名が参加しました。わたしは生産性向上支援訓練の講師候補として参加していましたが、正直なところ、研修内容について何もイメージが働かない状態でした。ポリテクセンターからは研修骨子の枠組みを中心にした話がある一方で、副社長からは仕事の悩み事が未整理の状態で吐露され、会議は混沌としていました。各人が調整能力を最大限に発揮してその場に対処しているようでした。


 そこでわたしは、副社長にこう尋ねました。


 「御社のWEBページの冒頭にあるミッションのストーリーで、この業界に携わる人々のイメージが書かれているのを拝見しました。このストーリーについて、副社長の想いを聞かせていただけませんか?」。


 わたしのこの発言が流れを変えました。会議はその後、副社長からのミッションの話から研修をスタートするということで内容のイメージが定まってきました。会議ではかなり大枠のイメージを共有するに留まったのですが、この研修はなんとかなるだろうという確信のようなものを参加者各人が得たのではないかと考えています。振り返れば、混沌とした状況のなかで、複雑性を許容しながら、対話能力とエンパワリング能力を発現する好機に恵まれました。


 その後、副社長によるミッションの話からグループでの対話に入り、組織の関係構築を促進するという内容で、研修を企画・実施することができました。


 わたしはこの企業研修は、次の3つの可能性の芽を育んだと思っています。

①クライアント企業の社員が、本質的なテーマで対話を継続し、組織行動力を高める

②ポリテクセンターがパラダイム転換の必要性について認識を強めていく

②日本生産性本部がパラダイム転換の必要性について認識を強めていく


 これら3つの可能性はそれぞれ独立してながらも、相互に関連して1つに結びつくモノなのだろうと思います。政府・組織・職場はそれぞれ異なる次元の論理で動いているようにも見えますが、スケールの大小には関係のない一貫した論理を見出し、そこに注力していくことが大切だと思います。





活動分野: Vulnerability からの精神的成長

発揮したインターミディエイターのマインドセット:

 □3分法思考/多元的思考

 ☑エンパシー能力

 ☑多様性・複雑性の許容

 ☑エンパワリング能力

 ☑対話能力

 ☑物語り能力

 ☑エンゲイジメント能力



Certified Intermediator


楠 宏太郎

公益財団法人 日本生産性本部


1962年東京生まれ。北海道大学文学部行動科学科卒。大学卒業後、日本生産性本部にて働く人のメンタルヘルスをテーマにして3年間勤務。1989年、留学を希望して退職。1990年John F. Kennedy大学院のInterdisciplinary Studies of Consciousness 専攻に入学。1993年に卒業。私設研究所にて活動の後、1996年に日本生産性本部に再入職。メンタルヘルス研究所、社会労働部、経営開発部にて主に研修・調査の仕事に従事している。






「インターミディエイター」は設樂剛事務所の登録商標です

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