インターミディエイター事務局
新しいバーチャル・ガイド・ツアーを目指したWeb開発 〜提供者・利用者という立場を超えて「楽しむ」という第3の視点から〜
板林淳哉 株式会社ダンクソフト 取締役
#アート #ガイドツアー #デジタル #ダンクソフト #板林淳哉

理想のオンライン・ガイド・ツアーとは?
Hさんはアート関係のお仕事に就いている方でした。美術館や様々なイベントや展示会などの場において、参加者に専門家として解説をするガイド・ツアーをしていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によって不特定多数の人が集まることや、屋内などでの発声を避けることを求められ、リアルな場で対面のガイド・ツアーを開催することが難しくなっていました。
非対面であれば、zoom等のオンライン・ミーティング・サービスを利用したオンライン・ツアーでもよいではないかと考えるかもしれません。
しかし、その場所におけるアート体験と専門家の解説を求めていた人たちが、そう簡単にオンライン・ツアーに参加しようと思うでしょうか?
美術館やイベントならその場に行きさえすればよかったのが、オンライン・ミーティングでは、スマートフォンやアプリの設定が求められます。デジタル・デバイスに慣れていない方たちにとって、それはとてもハードルが高いことでした。
Hさんとダンクソフトの協働プロジェクト ~デジタルの世界への第一歩、戸惑いを超えて
Hさんはたまたまスタッフとして参加したイベントで、そのイベント向けにWebサービスを提供しているダンクソフトと出会います。ダンクソフトは私が勤めている会社です。こうしてコロナ禍でも何かインターネットを使った形でガイド・ツアーが実現できないか模索していたHさんから相談を受けることになりました。
一方のダンクソフトも、コロナ禍で人が集まるイベントが休止されてしまったことに頭を抱えていたところでした。ダンクソフトの準備していた新しいサービス「WeARee!」も人が集まるリアルなイベントで使うことを前提に開発していたものだったからです。
Hさんのこれまでのガイド・ツアーなどの取り組みと現在の困難な状況をうかがって、お互いに協力できる部分があると分かったので、サービスや機能を提供し合いながら、協働プロジェクトをスタートすることとなりました。
Hさんとダンクソフトは、手始めにWebサービスを使った美術館でのガイド・ツアーの準備に取り組みました。しかし、初めての取り組みに慣れないことばかりで、理想に描いたような形は実現できませんでした。それでも試行錯誤を続け、何とか形になりましたが、目指していた形からは遠く、どうしたものかと検討を重ねる日々が続きました。
「こんなのあったら理想だよね」「面白い!それ作れちゃうかも(笑)」
そんな時、初めてそのバーチャル・ガイド・ツアーの話を聞いたHさんのアート仲間たちが関心を持って集まってきてくれました。様々な立場のアート仲間たちも、それぞれコロナ禍で課題を抱えていて、「一緒にやりたい」と協働プロジェクトに合流してくました。
Hさんとダンクソフトの関係の中に、新たにアート仲間たちが加わり、様々なアイディアが飛びかうオンライン・ミーティングが行われました。Webサービスを「提供する側」、「利用する側」という立場を越えて、また、Webサービスの機能に「関係のあるもの」「関係のないもの」という枠組みさえも超えて、「こんなのあったら理想だよね」「面白い!それ作れちゃうかも(笑)」と「プロジェクトを楽しむ」という視点から様々な意見が出ました。
楽しい対話の中で溢れでる意見は、Hさんを始めとした仲間たちの直面している課題を解決するための策として、また、Webサービスの質を高める新しい機能として、取り込むこととなりました。
「開発者」「利用者」という立場を超えて、「一緒に楽しむ」という第3の視点から
ダンクソフトも「開発する」だけでなく「一緒に楽しむ」立場として参加しました。利用する立場の人達の話を直接聞いてそれがそのまま開発につながり、しかもすぐに使えてフィードバックがもらえるという、この上なく楽しい開発環境にメンバーのモチベーションも高まります。
「開発する立場」「利用する立場」という2分する立場を超えて、「一緒に楽しむ」という3つ目の視点を持ち、それぞれのメンバーがイベント開催を心待ちにして、準備をすすめていきました。プロジェクトの熱量は人から人へ、関係の網の目を伝って広がっていったのだと思います。
イベント当日、ダンクソフトのメンバーは驚きました。噂が噂を呼んで、なんと最初の数倍の人数でのツアー開催となったのでした。
Hさんが最初に描いた理想とはまた違いますが、対話とエンパシーを重視し、多様な仲間たちの声を反映して、新しい形のバーチャル・ガイド・ツアーが生み出されました。このバーチャル・ガイド・ツアーは、きっとコロナ禍を越えた先も、今以上にどんどん面白いものになるはずだと確信しています。
関連リンク:
「コ・ラーニング」という考えで仕事をすれば、仕事はもっと楽しくなる」(ダンクソフト・コラム)
https://www.dunksoft.com/message/2021-08
新サービス WeARee! ウェブサイト
活動分野:
デジタル活用の推進
発揮したインターミディエイターのマインドセット:
☑3分法思考/多元的思考
☑エンパシー能力
□多様性・複雑性の許容
□エンゲイジメント能力
□エンパワリング能力
☑対話能力
□物語り能力
Certified Intermediator
板林淳哉
株式会社ダンクソフト取締役

金融系企業のホームページ構築、運用コンサルティング業務のほか、新規事業部門、経営企画などを担当。2011年の東日本大震災を機にテレワークを実践、各地でのサテライトオフィス普及に務める。2015年より総務省ふるさとテレワーク事業や徳島県阿南市、山口県萩市など自治体のテレワーク推進事業を担当。現在は、遠隔地をICTでつなぐイベント、都市農業と地域をICTでつなぐプロジェクトなどを推進中。