共感が生み出す日米合弁会社の新たな物語り

最終更新: 2018年12月7日

アラキアキ ハミングバード代表 バリュートレンスレイター


#共感 #コミュニケーション #グローバル企業 #企業文化 #対話 #未来

#アラキアキ

怖れと不安の雰囲気


  人生最大のピンチといっても過言ではない状況を迎えたのは、日本と米国の歴史ある製造業企業の合弁会社設立準備のコミュニケーションに携わった時のことでした。合弁会社は、日本企業の親会社の事業売却により、米国企業のグループ企業として、全世界に11拠点の事業所と生産拠点を持ち、14,000人が働くグローバル企業でした。日本企業出身の社員が99.5%、米国企業出身の社員が0.5%を占めており、グローバル企業といっても、日本的経営の企業文化が色濃く残っている企業でした。



  数年間にわたる合弁会社設立準備において、法務や財務、人事などに多くのリソースが割かれ、時間をかけて準備が必要なコミュニケーション関連の活動は後回しになっていました。私はそのような状況で、米国企業側の合弁会社設立準備室メンバーとして会社設立日の約3ヶ月前に参画しました。


  3ヶ月間にやらないといけないことは山のようにありました。なかでも最も重要なミッションは、合弁会社の企業文化がグローバルな企業文化にシフトしていけるよう、社員向けのコミュニケーションの仕組みとコンテンツを創っていくことでした。


  多くの社員は、終身雇用がほぼ保証されていた日々から、ITシステム、人事制度をはじめとした米国企業のやり方にシフトしなければならず、急激な環境変化や将来への不安などで、社内には怖れの気持ちが充満していました。「いつか自分の事業はリストラの対象になるかもしれない」、「米国企業は従業員に対してドライだ」など、合弁会社設立に対して後ろ向きなムードだったのです。



お互いが主張をすることで生まれる対立


  このネガティブな雰囲気を変えていくきっかけを作るコミュニケーションは何か?この問いがずっと続きました。日米双方のやり方を主張しあって受け入れることができないまま対立が続いている状況で、私は、何人かの社員にヒアリングをしてみることにしました。


  日本企業側の社員からは、「今まで自分たちが大切にしてきたものが無視されて、米国企業のやり方を押し付けられている」、「理想論ばかりで現状に沿っていない」との声が聞かれました。一方、米国企業側の社員は、「Noを言うが代案がなく、何をやりたいのかがわからない」「一緒に会社を設立する意思があるのかわからないほど物事が進まない」と言っています。


  両者の言い分を聞いて見えてきたのは、「米国企業が上で日本企業が従わないといけない」という構造がもとで歪みが生まれていること、「自分達の考え方が尊重されていない」「意図がわからない」などの対話が十分ではない状況でした。



物語りの力で


  コミュニケーションの立場でできることがいくつかありました。まず、日本企業と米国企業、それぞれのやり方のいいところをブレンドした新しい方法を作っていくこと。そして、米国企業グループへの参画することがとても望まれていることや、合弁会社がグループの成長を牽引する重要な役割を果たすことを伝える物語りを紡ぎだし、それを「伝える仕組み」を作ることでした。


  リソースは限られているし、時間も限られています。ですが、幸い米国企業日本法人の広報メンバーがクリエイティブなアイディアを実現していくことに長けていました。そこで、それぞれの人達で知恵を出し、物語りをさまざまなツールで伝えていく準備をしていきました。とくに重視したのは、日本企業のスタッフが「この合弁会社には自分が成長できる機会がある」「未来がある」などの前向きな気持ちを持てるようなエモーショナルなものを作ることでした。


  物語りを伝える一番パワフルなツールとなったのは、米国企業の多くのメンバーの協力を得て制作したビデオでした。なかでも、米国企業のCEOからスタッフまで、全世界の人々から集めたたくさんの”Welcome”メッセージには、「新たなファミリーに入る」ことをエモーショナルに感じてもらえたようでした。


  合弁会社設立後、「不安な気持ちでいっぱいでしたが、歓迎されているようで嬉しかった」「新しい企業になったことを実感した。」とのフィードバックをいただきました。不安や怖れを払拭することは簡単なことではありません。ですが、コミュニケーションによって、それらを払拭するきっかけをつくることはできたのではないかと思います。



活動分野: 組織のエンパワメント

発揮したインターミディエイターのマインドセット:

☑3分法思考/多元的思考

☑エンパシー能力

☑多様性・複雑性の許容

☑エンゲイジメント能力

☑エンパワリング能力

☑対話能力

☑物語り能力


Certified Intermediator


アラキ アキ

ハミングバード代表

バリュートレンスレイター



京都府生まれ。幼少期を海外で過ごす。

大学卒業後、12年間の日本マイクロソフトでのコーポレート・コミュニケーションを経て、外資系食品・飲料会社のCEOコミュニケーション、日米企業による合弁会社の設立コミュニケーションやインナー・ブランディングに携わる。IT業界における経験が長く、ITの関わるコミュニケーション活動、新たな価値観を創るコミュニケーションを得意とする。

また、日本の「調和」を重んじる文化を次世代に伝承する活動も精力的に行い、日本の食文化・生活文化をテーマにしたセミナーを各地で開催。

https://www.humbird.biz



Editor

福田 容子

「インターミディエイター」は設樂剛事務所の登録商標です

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